Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 腎泌尿器
シンポジウム10 泌尿器科癌取扱い規約にみる超音波診断基準の問題点

(S295)

前立腺がん取扱い規約の改定点と今後の課題

General rule for clinical and pathological studies on prostate cancer, - comparison with the previous version -

沖原 宏治

Koji OKIHARA

京都府立医科大学泌尿器外科学

Urology, Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

2010年12月に前立腺がん取扱い規約,第4版が発刊された.演者は今回の超音波診断部門の執筆に携わった.主に第3版における課題点を集約し,より実地臨床に即した改訂を目的とした.主要な改訂点として,1)可能な限り注釈を使用でず,本文中にkey pointを記載する,2)経腹的走査の限界を記載する一方,進行癌症例では診断可能な症例もあることを呈示する,3)パワードプラ法の有用性に加えて,血管解剖の呈示,non-hypoechoicかつnon-hypervascularである癌症例に関する追記,4)経腹的走査による前立腺容積の算定法,があげられる.特に2)に関しては,典型的な被膜浸潤(被膜エコーの不整)を認める写真を呈示した.この際,膀胱に尿がたまった状態で音響窓となっている.経腹的走査の写真をあえて呈示したのは,直腸指診の際,進行癌が疑われた場合,“経直腸走査の検査を待たず,まずは非侵襲的操作(経腹的走査)でstagingを行う大切さ”,を年頭においた.3)に関しては第3版規約では,パワードプラ検査で典型的なfocal vascular accumulationが描出された症例呈示にとどまっていた.本来,異常血流を診断する際に必要最低限の知識として,前立腺内部,周囲に流入する正常な血管解剖の知識が必要である.本版では,前立腺内部・周囲の正常な血管解剖のシェーマを加え,癌症例の写真の前に,正常例の血管枝(尿道枝,被膜枝)が描出された写真を添付した.4)に関しては,前版では,前立腺容積の算定に関し,積層法,楕円体法の方法のみが記載され,経腹的か経直腸的かの具体的な記載がなかった.本版では,走査法の違いをまず明記したうえで,より簡便な方法として経腹的走査による前立腺容積の算定法を追加した.上記を要約すると,2)4)は経直腸走査だけに依存しない方法論を普及する意図があり,3)は泌尿器科医の実際の臨床に即したものである.紙面の関係上,新規性のある超音波検査,たとえばエラストグラフィーや造影剤断層像に関する記載・画像呈示は割愛されたが,取扱規約の性格上,今後泌尿器科医がより有用性と限界に関するエビデンスの蓄積を図るためには,個人的にではあるが掲載が必要ではないかと考えている(2001年の第3版発刊時のパワードプラ検査がそうであったように).