Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 産婦人科
ワークショップ12 ここまで来た経会陰超音波

(S290)

TVM法による膀胱頸部過可動抑制は腹圧性尿失禁を抑制できない 経会陰超音波による検討

The limitation of bladder neck mobility by tension-free vaginal mesh procedure does not reduce the symptom of stress urinary incontinence

西林 学

Manabu NISHIBAYASHI

埼玉医科大学産科婦人科

OB/GY, Saitama Medical University

キーワード :

【目的】
膀胱頸部過可動は腹圧性尿失禁(SUI)の主因とされる.既に,経会陰超音波による膀胱頸部の観察(Fig.)によって,怒責時の膀胱頸部可動性(Bladder neck mobility:BNM)とSUI発症との関連が報告されている.今回,骨盤臓器脱に対する腟式根治術(以下従来法)及びTension-free vaginal mesh (TVM)法の術後に生じる腹圧性尿失禁(SUI)の発症機序について,経会陰超音波による観察結果をもとに検討した.
【方法】
2003年2月から2010年8月に従来法(前腟壁形成術を併せて施行)を行った123例と,anterior-TVMを行った158例を対象に,術前後のSUI発生についてICIQ-SFを用いて質問した.また経会陰超音波を用い怒責時の膀胱頸部可動性(Bladder neck mobility:BNM)を測定し,さらにTVM法において怒責時のmesh下端と尿道との位置関係,怒責時のmesh下端と恥骨下縁との距離(pubis-mesh gap:p-m gap)を測定した.なお経会陰超音波施行時には口頭で同意を得た.解析にはWelch’s t-test, log rank test等を用いp<0.05を統計的に有意とした.
【成績】
術前にSUIを合併した症例のうち術後にSUIを再発した症例の割合は,従来法で術後3ヶ月13.8%, 6ヶ月26.7%だったが,TVM法では75.3%,72.5%とTVM法で有意に高値だった.BNMは,従来法では術前12.6±6.7mmから術後1ヶ月7.1±3.6mmと有意に減少し,その後は徐々に増大した.一方TVM法では術前14.6±7.0mmから術後1ヶ月9.6±7.4mmと有意に軽減するもその後は増大しなかった.またTVM法のうち術前にSUIを合併した症例について検討したところ,SUIが術後に改善した群では,術後にSUIが改善しなかった群と比較して怒責時にmesh下端が尿道中部に存在する割合が有意に高く(94.2%vs. 67.6%),p-m gapが有意に短かった(15.0±6.3mm vs. 21.1±6.5mm)
【結論】
TVM法によって膀胱頸部過可動が抑制されても,術後のSUI発症率は改善されないことが明らかとなった.mesh留置自体がSUIの原因となっている可能性があるとともに,meshの位置によってはTension-free vaginal tape(TVT)同様の機序でSUIを抑制している可能性があると考えられた.