西村 和朗, 吉村 和晃, 久保 達彦, 蜂須賀 徹

Kazuaki NISHIMURA, Kazuaki YOSHIMURA, Tatuhiko KUBO, Toru HACHISUGA

産業医科大学産婦人科

obstetrics and gynecology, University of Occupational and Environmental Health

キーワード :

【目的】
近年,経会陰超音波による骨盤内評価法が発展し,分娩進行を客観的に評価しようという試みがある．今回我々は,経会陰超音波が客観的な分娩進行把握に役立つかを検証し,経会陰超音波をもとに分娩進行の新たな指標を作成することを目的とした．
【方法】
超音波装置はGE health care社のVolusonE8を使用した．36週以降の62人の単胎妊婦に対し分娩開始後,内診と同時に経会陰超音波を行い,総超音波画像212枚をSonography Volume Computer Aided Display （Sono VCAD）Laborで解析した．分娩過程評価項目を,恥骨の垂線と児頭長軸の向きとの角度としてfetal head direction（HD）図①,恥骨下端の垂線から児頭先端までの距離progression distance（PD）図②,恥骨長軸と児頭先端との角度progression angle （PA）図③の3項目と内診所見（子宮口開大度・児頭下降度）との相関を検討した．
【結果】
62例中52例が経腟分娩となり,10例が分娩停止で帝王切開となった．分娩停止症例は超音波経時的な超音波画像で,児頭の位置がほぼ変わらず同位置で児頭下降が止まっていた．分娩進行例では,図のように経時的な児頭位置の推移を確認できた．PA／PD／HD と子宮口開大度の相関係数はそれぞれr=0.714／0.665／0.664,PA ／PD／HDと児頭下降度の相関係数はそれぞれr=0.802／0.748／0.677であり,いずれもp＜0.001であった．また分娩停止の10症例についても検討した．1例を除いて9症例はPA 140度以上に増加せず,PD 70mm以上はなく,またHDは110度以上に増加しなかった．
【結論】
PA・PD・HDはいずれも相関が強いが,内診との相関が最も強かったのはPAであり,PAが分娩進行の把握により有用と考えた．経会陰超音波は分娩停止例の確認や分娩進行の客観的評価に有用であり,分娩管理に不可欠な検査となり得る．経会陰超音波は今後臨床的に有用になる可能性がある．