Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 産婦人科
ワークショップ5 皆で共有したい印象に残る産婦人科症例

(S286)

左卵管絨毛癌の一例

A left tubal extrauterine choriocarcinoma: a case report

三島 隆, 村越 毅, 神農 隆, 松下 充, 松本 美奈子, 安達 博, 成瀬 寛夫, 中山 理, 鳥居 裕一

Takashi MISHIMA, Takeshi MURAKOSHI, Takashi SHINNO, Mituru MATUSHITA, Minako MATSUMOTO, Hiroshi ADACHI, Hiroo NARUSE, Satoru NAKAYAMA, Yuuichi TORII

聖隷浜松病院産婦人科

Division of Obstetrics and Gynecology, Maternal and Perinatal Care Center, Seirei Hamamatsu General Hospital

キーワード :

【背景】
子宮外絨毛癌(extrauterine choriocarcinoma)は異所性妊娠の成立する部位に病巣が存在するが,子宮内には病巣が認められない絨毛癌と定義され[1],1,000,000妊娠に1.5回と極めてまれな疾患である[2].異所性妊娠として近医より紹介されたが,子宮外絨毛癌であった症例を経験したため超音波画像を提示する.
【症例】
34歳女性,3経妊P1経産(人工妊娠中絶1回,異所性妊娠1回).妊娠反応陽性で近医初診.最終月経より妊娠5w2dで子宮内に胎嚢ははっきりせず.妊娠7w2d,子宮内に胎嚢なく,左卵管角付近に40-45mmの血腫を疑わせる高エコー域あり.妊娠7w6d,子宮内に胎嚢なし,左卵管角には同様の像であったため,異所性妊娠の疑いで当院当科に紹介初診.来院時バイタル異常なし.左下腹部に軽度圧痛のみで,出血は茶色帯下が少量.経腟超音波では左卵管に3cm程度の内部不均一,境界明瞭,血流豊富な高エコー域を認めた.血清hCGは133,317mIU/mLと高値であったため絨毛性疾患が疑われた.絨毛癌スコアは10点であり,子宮内に病変を認めず左卵管に病変を認めることから左卵管の子宮外絨毛癌の診断となった.全身検索では転移巣をみとめなかった.妊孕性温存の希望もあり手術療法は選択せずEMA/CO療法開始となり,現在治療継続中である.
【考察】
絨毛癌は子宮に病巣がある場合は,不正子宮出血が主症状である[1].本症例は出血は主症状ではなく,妊娠検査薬陽性であるが子宮内に胎嚢や構造物を認めず,左卵管周囲に経膣超音波で凝血塊を疑わせる高エコー域を認めたため異所性妊娠が疑われた症例であった.血流豊富な子宮外の腫瘍が確認され,絨毛癌スコアにて臨床的に子宮外絨毛癌と診断されたため化学療法を遅滞なく開始することができた.
【結論】
異所性妊娠が疑われる経過で血流豊富な子宮外の構造物を認める場合には子宮外絨毛癌を鑑別する必要がある.
[1]日本産婦人科学会・日本病理学会編 “絨毛性疾患取扱い規約 第3版” 2011
[2]Gillepire A.M., et al. “The clinical presentation, treatment, and outcome of patients diagnosed with possible ectopic molar gestation”. Int.J.Gynecol.Cancer14, 366 2004