Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 産婦人科
ワークショップ5 皆で共有したい印象に残る産婦人科症例

(S283)

胎児超音波検査で足趾の特徴的配列を確認し得た変容性骨異形成症の一例

A case of metatropic dysplasia with fetal characteristic overriding toes detected by ultrasonography

司馬 正浩1, 梁 栄治1, 松本 泰弘1, 鎌田 英男1, 市田 宏司1, 笹森 幸文1, 木戸 浩一郎1, 綾部 琢哉1, 西村 玄2, 池川 志郎3

Masahiro SHIBA1, Eiji RYO1, Yasuhiro MATSUMOTO1, Hideo KAMATA1, Hiroshi ICHIDA1, Yukifumi SASAMORI1, Koichiro KIDO1, Takuya AYABE1, Gen NISHIMURA2, Shiro IKEGAWA3

1帝京大学医学部附属病院産婦人科, 2東京都立小児総合医療センター放射線科, 3理化学研究所ゲノム医科学研究センター・骨関節疾患研究チーム

1Department of Obstetrics and Gynecology, Teikyo University School of Medicine, 2Department of Pediatric Imaging, Tokyo Metropolitan Children’s Hospital, 3Laboratory for Bone and Joint Diseases, Center for Genomic Medicine, RIKEN

キーワード :

【はじめに】
変容性骨異形成症(metatropic dysplasia; 以下MD)はまれな骨系統疾患であり,英文では100症例程度報告されている.短い四肢,関節の腫大と可動制限,頭蓋顔面の異常を認める.扁平椎であり,成長するにつれ脊柱後側弯を伴い低身長となる.難聴も合併しうる.常染色体優性遺伝の形式を示し,TRPV4遺伝子の変異が認められる.特徴的な足趾の配列が診断上重要とされるが,胎児期の超音波所見でこれが報告された例はない.
今回我々は,胎児超音波検査において足趾の特徴的配列を確認し,出生後にMDの診断に至った一例を経験したので,報告する.
【症例】
32歳2回経妊0回経産(人工流産2回).妊娠28週頃から胎児大腿骨長短縮を認め,精査目的で当科紹介,妊娠32週0日に初診,以後当科で管理.
胎児超音波検査にて,
・足趾が長く,第1, 3, 5指と第2, 4指が互い違いになっている(写真)
・BPDは+3.8SDと大きく,FLは-3.1SDと短縮
・遠位骨も短縮・躯幹はほぼ正常の大きさ
・鼻根部は陥凹,前頭部は突出
・軽度の胸郭低形成が疑われる
などの所見から,骨系統疾患を疑った.
治療方針には影響を与えないため,X線被爆を避ける意味で,胎児CT検査は施行しなかった.妊娠37週6日,児頭が大きいこと,患者の希望があることから選択的帝王切開とした.3520g男児,頭囲は36.5cmであった.
肉眼的所見としては,胎児超音波検査で認められたとおり,足趾が互い違いになっていた(写真).手指・足趾は長く,手指は常時伸展位であった.両側大腿と上腕は短縮,耳介は小さく鼻も低かった.
単純X線検査では,横径が狭い胸郭であり,四肢の長管骨は幅広く,著明に短縮し,ダンベル型変化を認めた.
以上の所見からMDと診断した.頸椎CTでは扁平椎・骨形成不良を認め,頸髄MRIではC1レベルの脊柱管狭窄を認めた.
児は日齢36に退院した.生後4か月現在,聴覚障害が疑われるが呼吸循環状態その他全身状態は落ち着いており,通院経過観察中である.Genotypeは精査中である.
【考察】
骨系統疾患は種類が多様で,鑑別診断が困難な場合が多いが,特徴的な足趾配列が胎児超音波検査で確認された場合,変容性骨異形成症である可能性が高く,超音波診断が重要であると考えられた.