Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 産婦人科
パネルディスカッション8 胎児超音波検査ガイドラインはこれでよいか

(S281)

当院における胎児超音波スクリーニングの検討

Diagnosis of fetal ultrasonography screening test

松島 実穂, 谷垣 伸治, 橋本 玲子, 宮崎 典子

Miho MATSUSHIMA, Shinji TANIGAKI, Reiko HASHIMOTO, Noriko MIYAZAKI

杏林大学医学部付属病院産科婦人科学教室

Department of obstetrics and gynecology, Kyorin university hospital

キーワード :

【目的】
胎児超音波ガイドラインに必須のものとして,胎児超音波スクリーニングがあげられる.スクリーニングには簡便性,効率性,客観性が求められ,それに応じたスクリーニング項目を定める必要がある.当院では,妊娠20週前後および妊娠30週前後に胎児超音波スクリーニングを行っており,12のスクリーニング項目を設け,陽性項目を認めた症例は,胎児超音波精査外来を受診することとしている.当院胎児超音波スクリーニングの検討から,スクリーニング項目の妥当性を評価し,胎児超音波ガイドライン作成に寄与することを目的とした.
【対象と方法】
2009年1月から2010年12月までに胎児異常を指摘され精査外来を受診した105症例(院内症例,他院からの紹介症例を含む)を対象として,当院で行っているスクリーニングの有効性を評価することにより,そのスクリーニング項目の妥当性を後方視的に検討した.
【スクリーニング項目】
当院におけるスクリーニング項目は,①胎児発育遅延を認めない②頭蓋から突出する病変がない③10mmルール 側脳室三角部径が10mm以下 後頭蓋窩が10mm以下④胸腔内に心臓以外の低エコー領域がない⑤内臓錯位がない⑥心臓四腔断面を認める(心房・心室の存在の確認,左右差がない)⑦腹腔内に胃胞及び膀胱以外の嚢胞性低エコー像がない⑧腹囲が-2SD以上である⑨大腿骨長が-2SD以上である⑩脊椎に突出する病変がない⑪側弯がない⑫羊水量がAFPで2cm以上7cm以下である,の12項目である.現在,これまでの結果をふまえ,スクリーニング項目に,頭部にMid-lineがある,3 vessels viewを追加することを検討中である.
【結果】
スクリーニング陽性例は98例(86.7%)であった.偽陰性例(疾患を有するもスクリーニング陰性例)は,全前脳胞症,孔脳症,ガレン静脈瘤,ベルガ腔拡大,透明中隔欠損,口唇裂,心室中隔欠損症および肺動脈狭窄,心室中隔欠損症単独,両大血管右室起始,重複上大静脈,動脈輪,不整脈,両側腎拡大,臍帯嚢腫,aminiotic sheetsだった.新しいスクリーニング項目を加える事により,陽性率は93.8%に上昇した.偽陰性例は,口唇裂,心室中隔欠損症,重複上大静脈,不整脈,両側腎拡大,臍帯嚢腫,aminiotic sheetsのみとなり,致命的な疾患はなかった.
【考察】
胎児超音波スクリーニングの目的は,精査外来を受診すべき症例の検出にある.当院でのスクリーニング陽性率の結果から,従来までのスクリーニング項目でも有効性は高いと思われる.新しくスクリーニング項目を追加することは,さらに陽性率を向上させ,致命的な疾患の検出を可能とする.スクリーニングは,外来での短い診療時間内に検査可能であること,胎児超音波に関する専門性の高い知識を必要とせずに検査が可能であること,稀な疾患の検出よりも周産期管理を行うことにより予後改善が可能である疾患の抽出に重きをおくことが重要である.また妊娠20週のスクリーニングでは致死的な疾患を見逃さないことも,両親に選択肢を与えるために必要である.当院でのスクリーニングはこれらの項目を満たすものとして提唱できると考える.今後も症例を蓄積して検討を重ねてゆきたい.