Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 産婦人科
シンポジウム4 妊娠初期胎児スクリーニングを考える

(S277)

インフォームド・チョイスと望まれる長期的支援-セルフヘルプグループに寄せられた声

“Informed choice” and the expected long-term support -The voice that was sent to the self-help group-

藤本 佳代子

Kayoko FUJIMOTO

出生前診断の告知のあり方と自己決定の支援について考える“泣いて笑って”代表

Representative, Thinking about tha issues of the prenatal diagnosis and support for the self-decision

キーワード :

【背景】
妊婦健診で当然のように受けるエコー検査.妊婦達はお腹の中の我が子に会えるその瞬間を,とても楽しみにしている.妊娠中,もっとも幸せな時間でもあるだろう.しかし,妊娠初期に胎児になんらかの異常があると告知されることになった妊婦達は,ショックと混乱の中で突如,意思決定を迫られる.その意思決定とは,妊娠を継続するか否かという非常に厳しい決定であることも少なくない.
【対象】
出生前診断の告知のあり方と自己決定の支援について考える“泣いて笑って”は,非公開性のコミュニティサイトをSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)ミクシィを利用して開設している.2012年1月現在,参加者数は延べ1000人を上回った.このコミュニティに参加している当事者や体験者の大多数は,苦渋の決断により人工妊娠中絶で我が子を失った母親とそのパートナーである.
【結論】
妊娠中のエコー検査により,胎児の重篤な疾患・異常が発見され,医師からその事実をあまりにも唐突且つ突然に告知される時,妊婦はその厳しい告知内容に大きなショックと混乱を受け,著しく不安定な精神状態に陥る.この局面で一番重要な問題は,母親である妊婦が,告知と同時に突如として重大な自己決定を迫られ,限られた時間の中で ”助かる見込みの低い(若しくは生まれたら亡くなる)赤ちゃんの命”と“母体の危険性”という,医師からの情報だけを基に,医療現場から離れたところで,一人で決断しなければならないことである.大きな混乱とショック状態にある妊婦は 通常の判断能力を発揮できる状態ではなく,スタッフのサポートを必要としている.どのような働きかけやコミュニケーションがあればいいのか,どのような意思の表出と受け止め方が可能なのか,どのような場所や経験・判断材料の提供があればいいのか,自己決定の過程とそれを可能にするための方法について,これから検討・議論が深まることを,“泣いて笑って”は希望する.