Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 産婦人科
シンポジウム4 妊娠初期胎児スクリーニングを考える

(S276)

妊娠9〜16週の胎児心臓超音波検査:描出率と心臓形態異常における所見について

Fetal echocardiography between 9 and 16 weeks of gestation: the evaluation of detection rate and abnormal findings.

青木 昭和, 石原 とも子, 中山 健太郎, 宮崎 康二

Showa AOKI, Tomoko ISHIHARA, Kentaroh NAKAYAMA, Kohji MIYAZAKI

島根大学医学部産科婦人科

Obstetrics and Gynecology, Shimane University Faculty of Medicine

キーワード :

【目的】
妊娠9週から16週における胎児心臓の基本断面の描出率,および異常例の心エコー所見について検討することを目的とした.
【方法】
ICが得られCRLにて週数補正を行った,合併症のない正常胎児52例(正常群),および最近2年間で妊娠9週から16週の間に心臓の形態・血流異常を認めた7例(異常群)を対象とした.心臓検査はすべて超音波診断装置にて産科超音波専門医が行い,走査法は,経腹法・経腟法のいずれかを用いた.正常群では,妊娠9-16週に胎児心臓の4 chamber view(4ch-V),3-vessel view(3V-V),3-vessel tracheal view(3VT-V),left ventricle outlet tract view(LVOT),right ventricle outlet tract view(RVOT)の描出率について,Bモード法(B群),カラードプラ法(C群)で検討した.異常群では,これらの描出断面をもとに,その異常所見を検討した.検査中のTI, MIは1.0未満とし,カラードプラは15秒以内の使用とした.統計はFisher直接確率法を用いた.
【成績】
正常群では,妊娠9週から16週での描出率はB群で4ch-V 96%,3V-V 73%,3VT-V 65%,LVOT 77%,RVOT 73%,C群で4ch-V 96%,3V-V 90%,3VT-V 81%,LVOT 87%,RVOT 90%であった.早い時期として4ch-Vは妊娠9週後半に描出が可能であった.B群とC群の比較では3V-VとRVOTでC群がB群に比べ有意に高い描出率を示した(p=002).描出時期としては11-12週の3V-Vと3VT-VでC群がB群に比べ有意に高い描出率を示した(p=0.01).妊娠週数による影響では,B群では妊娠9週以降の4ch-Vの描出率において,C群では妊娠11週以降の4ch-V,3V-V,RVOTの描出率において,妊娠週数の影響を受けず高い描出率を示した.異常群の内訳はAVSD2例,SV+DORV+AS(AVSD疑い+DORV疑い)1例,右心室瘤1例,心臓脱出(pentalogy of Cantrell)1例,心内異常血流(TR)1例(後にTR消失),正常(VSD疑い+DORV疑い)1例であった.最初に所見を認めた週数は,妊娠12週が1例(AVSD),15週が1例(正常:VSD疑い+DORV疑い)で他は13週であった.このうち妊娠20週以降ないし出生後の検査で最終診断を得たのは4例(AVSD1例,SV+DORV+AS1例,右心室瘤1例,TR1例)であり,16週以前と同じ診断は2例であった.SV+DORV+ASの1例では16週未満でAVSD+DORVを疑っており,TRの1例では20週までに所見が消失していた.今回の異常症例では,すべてNTや心臓以外の他の形態異常がきっかけで心臓精査に至った症例であり,心臓単独の異常所見で発見されたものではなかった.
【結論】
胎児心臓構造は描出断面によっては週数の影響なく妊娠9週後半からBモード法で判別され,カラードプラ法により描出率向上を認めた.しかし異常例ではNTや他の形態異常が契機となり精査に至った場合が多く,心臓単独の妊娠初期スクリーニングからの抽出例について今後の検討が必要と思われた.診断では,AVSDなど特徴的なmajor CHDの場合12週でも可能であったが,細かい心内構造異常や大血管走行異常の評価は14-16週以降が良いと思われた.また重症度判定は妊娠中の変化を考慮しさらに進んだ週数が必要と思われた.