Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
ワークショップ7 消化器疾患診療における三次元超音波の現状

(S271)

腹部領域におけるfly-through imageの有用性

Fly-through image of abdominal ultrasound.

畠 二郎1, 眞部 紀明1, 今村 祐志1, 河合 良介1, 飯田 あい1, 楠 裕明2, 鎌田 智有1, 春間 賢1, 嶺 喜隆3

Jiro HATA1, Noriaki MANABE1, Hiroshi IMAMURA1, Ryosuke KAWAI1, Ai IIDA1, Hiroaki KUSUNOKI2, Tomoari KAMADA1, Ken HARUMA1, Yoshitaka MINE3

1川崎医科大学消化管内科, 2川崎医科大学総合臨床医学, 3東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部

1Dept. of Gastroenterology, Kawasaki Medical School, 2Dept. of General Medicine, Kawasaki Medical School, 3Dept. of Ultrasound Systems Development, Toshiba Medical Systems Corp.

キーワード :

【背景】
CTやMRIなどのmodalityと同様に超音波を用いた3D表示が行われるようになっている.その中で管腔内に視点を置いてあたかも観察者が内腔を通行しているかのような画像であるfly through imageは,管腔臓器のより分かりやすい表示法として期待される.そこで各種管腔臓器におけるfly through imageの作成を試みた.
【対象と方法】
各種疾患の病変におけるvolume dataを取得し,機器内臓のソフトを用いてsurface renderingによるfly through imageを作成した.そのうちで主に胆管,膵管,ならびに腹部血管の画像を呈示し,若干の考察を加える.使用機器は東芝社製AplioTM,プローブは中心周波数3.75MHzから12MHzである.Volume dataの取得はmechanicalにプローブを扇動する方法を用いた.血管については一部で造影下においてもvolume dataを取得した.他には特別な前処置等は行わず,通常の超音波検査と同様に体表より走査した.
【結果】
volume dataの取得は全例で可能であった.しかしながら判読可能なfly through imageの作成はそれらのうち約半数であった.画像不良の原因として,体壁や腹部臓器からの多重反射,さらには近接する消化管からのサイドローブなどのartifactにより管腔内と周囲実質とのコントラストが不明瞭になること,消化管内のガスや管腔の側壁などから生ずる音響陰影によるデータの欠損などが挙げられた.特に動脈では側壁のデータ欠損が目立ち,これに対しては造影下でのvolume data取得が有効であった.基本的にfly through画像は病変のより分かりやすい表示としては有用と思われたが,今回の検討では通常の2D画像に基づく診断がfly through画像により変更される,あるいはさらに正確になるという症例は経験しなかった.
【考察】
fly through imageの利点としては管腔臓器が分かりやすく表示されるため,担当医や患者に対するプレゼンテーション画像として優れていることが挙げられる.一方欠点として画像を作成する元となるvolume dataが不良である場合,それにより作成されたfly through画像はむしろ誤解を生ずる可能性も考えられる.Volume dataを取得している時点,すなわち通常の2D画像では気付かないあるいは診断できなかったものがfly through画像をreviewすることで発見または正確に診断される可能性も考えられるが,画像の細やかさと滑らかさにはある程度のtrade offが存在することから,そのためにはartifactやnoiseのない,いわゆる完璧なvolume dataの取得が前提として必須である.現時点における現実的な臨床応用としては管腔内を観察しながら狭窄など病変が存在する部位において多方面の断層像を参照することによりさらに詳細な診断が行えると考えるが,そのためには特にC面(体表と水平な断面)の画像が診断に耐える程度の緻密さと分解能が要求される.
【結語】
fly through imageは管腔臓器の新しい表示法として今後期待されるが,診断を左右するほどのインパクトを与えるためにはB-mode画像を中心にさらなる改善が必要である.