Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
ワークショップ7 消化器疾患診療における三次元超音波の現状

(S269)

肝癌ラジオ波凝固療法におけるRVS併用造影3D USによる治療効果判定

Utility of contrast-enhanced 3D US combined with RVS for evaluating therapeutic effect of radiofrequency ablation for hepatocellular carcinoma

利國 信行, 白枝 久和, 松江 泰弘, 野村 友映, 山田 英登, 林 伸彦, 尾崎 一昌, 土島 睦, 堤 幹宏, 有沢 富康

Nobuyuki TOSHIKUNI, Hisakazu SHIROEDA, Yasuhiro MATSUE, Tomoe NOMURA, Hideto YAMADA, Nobuhiko HAYASHI, Kazumasa OZAKI, Mutsumi TSUCHISHIMA, Mikihiro TSUTSUMI, Tomiyasu ARISAWA

金沢医科大学消化器内科

Department of Gastroenterology, Kanazawa Medical University

キーワード :

【目的】
肝癌(HCC)に対するラジオ波凝固療法(RFA)の問題点として,治療と効果判定に用いられるモダリティの違いがある.すなわち,治療は超音波(US),効果判定はCTまたはMRIで通常行っており,この違いが効果判定と追加治療の検討を時に困難にさせている.近年,造影US,real-time virtual sonography (RVS),さらには三次元US(3D US)といったUSの新技術が次々に登場している.そこでHCCの診断・治療・効果判定をUSで完結すべく,これらの技術を駆使した治療効果判定を試みた.
【方法】
対象はRFAを施行したHCC.US装置はHI VISION Preirus(日立メディコ)を使用.治療前にコンベックス型プローブ(EUP-C715)を用いてSonazoid(第一三共)造影下に,想定される穿刺部位からHCC全体をその周囲を含んでmanual scan(15秒)し,造影3D US画像として保存.RFAはHI VISION Preirus,マイクロコンベックス型プローブ(EUP-B512)およびCool-tip RFAシステム(Covidien)を用いて施行.RFAの1,2日後に治療効果判定のためEUP-C715プローブにてSonazoid造影USを施行.その際RVSを併用して,左画面に保存していた造影3D US画像を参照画像として表示,右画面に造影モード画像を表示し,位置を合わせ両者を同期.RVSのマーキング機能を用いると2画面に同期したマーカーが表示される.この機能を利用し球マーカーを左画面の治療前HCCの輪郭に重ね合わせると,右画面の治療後の造影US画像に治療前HCCを球マーカーとして表示することができる.この状態でSonazoid造影を施行しablation領域全体をscanして動画保存.その後動画をコマ送り再生し,ablation境界とマーカーとの距離をcaliperを用いて測定しmarginを評価した.なお造影CTまたはMRIを用いた治療効果判定も従来通り行なった.
【結果】
この方法のポイントは,治療後の画面に治療前HCCを球マーカーとして正確に表示できるかどうかである.予備実験として球体を含有するファントムを用いてこれが可能であることを確認した.参照画像の保存はscan後,約15秒で完了した.参照画像の正確性には特に問題がなかった.検査時に磁気発生器の位置を一定にしておく(剣状突起に合わせるなど)と,2画面の同期を円滑に行うことができた.HCCは完全な球体ではないため,HCCの輪郭とマーカーに多少のずれが認められたが,marginの評価に大きな支障はなかった.またmargin評価に要する時間は数分であった.なお参照画像は常に造影モードで作成する必要はないが,造影モード画像はHCC周囲の構造物が強調され治療後の画像と対比しやすかった.この方法では治療前HCC画像を治療後の画像に擬似的に重ね合わせる(overlay)ことができるため,造影CTまたはMRIを用いた従来のside by sideでの効果判定と比較してより直接的にmarginを計測でき,容易に追加治療の必要性を評価することができた.
【結語】
RVS併用造影3D USはHCCラジオ波凝固療法の効果判定に有用であり,その簡便さから実用性は高いと思われた.USで描出可能なHCCについては,新技術を組み合わせることによって「US完結型治療システム」を構築できる可能性が示唆された.