Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
ワークショップ7 消化器疾患診療における三次元超音波の現状

(S268)

高音圧モードを用いた3D造影超音波検査による膵充実性腫瘤の鑑別

Differentiation of solid pancreatic lesions by using three-dimensional contrast enhanced ultrasonography with a high mechanical index mode

三輪 治生1, 沼田 和司1, 田邊 暢1, 高 蓮浩1, 金子 卓1, 杉森 一哉1, 田中 克明1, 前田 愼2

Haruo MIWA1, Kazushi NUMATA1, Toru TANABE1, Ryonho KO1, Takashi KANEKO1, Kazuya SUGIMORI1, Katsuaki TANAKA1, Shin MAEDA2

1横浜市立大学附属市民総合医療センター, 2横浜市立大学附属病院消化器内科

1Gastroenterological Center, Yokohama City University Medical Center, 2Gastroenterological Department, Yokohama City University Hospital

キーワード :

【背景】
高音圧モードによる造影超音波検査は,腫瘍血管の描出や染影の評価に優れている.また,3D超音波検査と組み合わせることにより,多断面を同時相にて観察でき,膵腫瘤の観察において正常部との比較を可能にする.
【目的】
膵充実性腫瘤を,高音圧モードを用いた3D造影超音波検査の造影パターンにより分類し,鑑別診断における有用性を検討した.
【対象】
2007年3月から2011年11月までに膵充実性腫瘤に対して高音圧モードによる3D造影超音波検査を施行し,病理学的確定診断が得られた57例.内訳は,膵管癌(PC) 42例,腫瘤形成性膵炎(MFP) 7例,神経内分泌腫瘍(NET) 8例であった.
【方法】
超音波装置はGEヘルスケア社製LOGIQ7,プローブは4D3CLを使用した.初めにB-modeでスキャン範囲を確定した後に,Sonazoid 0.2ml/bodyをbolus injectionし,60秒後までを早期相,120秒前後を中間相として,それぞれ1〜3回スキャンした.造影モードは,高音圧用のモードであるCoded Harmonic Angio (CHA) mode(MI値0.8前後)を用い,autosweepにてvolume dataを取得し,CTの様に多断面を等間隔に並べた画像に再構築した.これを用いることにより,腫瘤と正常膵を比較し,早期相での染影をhypervascular,isovascular,hypovascularに分類した.また,腫瘤内部の血管の局在と形状から,peritumoral regular vessel,peritumoral irregular vessel,intratumoral regular vessel,intratumoral irregular vesselに分類し,vessel patternとした.中間相では,染影が持続するものをpersistence,低下するものをwash outとした.これらの結果から,膵充実性腫瘤の鑑別における有用性をretrospectiveに検討した.なお,Sonazoidは,膵疾患に対して保険承認されていないため,当院の倫理審査委員会の承認を受け,患者の同意を得た上で検査を施行した.
【成績】
早期相の染影,vessel pattern,中間相の染影による24通りの組み合わせのうち,今回の対象が含まれる造影パターンは13通り存在し,それぞれをPC pattern, MFP pattern,NET patternに分類した.PC patternは,7通り存在し,71%(41/57)の症例が含まれ,最も多いものは,hypovascular/peritumoral irregular vessel/wash outであった.MFP patternは,2通り存在し,11%(6/57)の症例が含まれ,最も多いものは,isovascular/intratumoral regular vessel/persistenceであった.NET patternは,3通り存在し,14%(8/57)の症例が含まれ,最も多いものは,hypervasucular/intratumoral irregular vessel/persistenceであった.これらの造影パターンを用いて鑑別診断を行った場合の感度,特異度,正診率は,PC patternでは,92.9%(39/42),93.3%(14/15),93.0%(53/57), MFP patternでは,71.4%(5/7),98.0%(49/50),94.7%(54/57), NET patternでは,75.0%(6/8),98.0%(48/49),94.7%(54/57)であった.
【結論】
高音圧モードを用いた3D造影超音波検査により分類した造影パターンは,膵充実性腫瘤の鑑別に有用であることが示唆された.