Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
ワークショップ7 消化器疾患診療における三次元超音波の現状

(S268)

胃静脈瘤に対する新たな画像診断:非造影体外走査超音波による立体映像の定量的検討

Three dimensional quantitative analysis of color Doppler images for gastric varices

亀崎 秀宏1, 丸山 紀史1, 近藤 孝行1, 関本 匡1, 嶋田 太郎1, 高橋 正憲1, 横須賀 收1, 嶺 喜隆2

Hidehiro KAMEZAKI1, Hitoshi MARUYAMA1, Takayuki KONDO1, Tadashi SEKIMOTO1, Taro SHIMADA1, Masanori TAKAHASHI1, Osamu YOKOSUKA1, Yoshitaka MINE2

1千葉大学医学部附属病院消化器内科, 2東芝メディカルシステムズ株式会社超音波事業部超音波開発部

1Department of Medicine and Clinical Oncology, Chiba University, Graduate School of Medicine, 2Division of Ultrasound Development, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【目的】
胃静脈瘤は門脈圧亢進症における主要な合併症の一つであり,その有無や占拠部位,発達程度については通常,内視鏡所見で判定される.しかし,本症は血行異常に基づく病変であることから,血流表示を基盤とした映像法も,その診断に有用であることが予想される.本研究(IRB承認)で我々は,体外走査超音波による3Dカラー表示で胃静脈瘤の映像化を試みた.同所見を内視鏡像や超音波ドプラからみた血行動態と比較検討することで,その臨床的有用性を明らかにした.
【方法】
対象は,内視鏡的に診断された未治療の胃静脈瘤を合併した慢性肝疾患39例(胃底部静脈瘤31,噴門部静脈瘤8; F1 18, F2 14, F3 7)と,胃静脈瘤を有さない慢性肝疾患36例(コントロール)である.超音波装置はAPLIO-XG(東芝),3D専用プローブ(382MVマイクロコンベックス型)を使用し,表示法はカラーモードで走査角は45度とした.まず仰臥位,左側腹部斜走査で脾を介して胃壁ならびに静脈瘤を描出し,アーチファクトが目立たない程度で最大の速度レンジ,ゲインを設定した.そして,数秒の呼吸停止下で静脈瘤を含む胃上部全体を撮影した(2名の術者,各3回).得られたvolume data上でB-modeからみた胃壁を同定し,それより胃内腔側に突出した血流表示部分を3D像上での胃静脈瘤部と定義した.静脈瘤部と胃壁との距離,および静脈瘤の選択的トレースの積算値によって得られた静脈瘤容積を求め,内視鏡所見と比較検討した.また静脈瘤部の表面性状をvolume renderingにより映像化し,内視鏡所見との類似性について,2名の読影者による5段階評価(酷似,近似,部分的一致,大半相違,不一致)での盲検判定を行った.
【成績】
1.静脈瘤の検出:3D超音波での静脈瘤は,有静脈瘤例の82.1%(32/39)において描出され,コントロールでは検出されなかった(特異度100%).3D画像上での容積算出の所要時間は1名あたり約30分で,静脈瘤容積の術者内変動はICC(1, 3)=0.983(0.968〜0.992),術者間変動はICC(3, 2)=0.988(0.975〜0.994)と良好であった.なお,静脈瘤が検出されなかった7例中5例はF1で,他の2例(F3)はBMIが27.3,30.0と超音波検査に不利な体型であった.2.内視鏡所見と3D超音波所見の対比:まず占拠部位について検討した.胃底部静脈瘤(Lg-f,-cf)は,全例で脾側の胃壁に接した血流信号として観察されたが,噴門部静脈瘤は脾側の胃壁から13.0-16.5(14.6±1.3)mmの距離を介して観察された.後者については,解剖学上,食道胃接合部に一致した部位と考えられ,噴門静脈瘤の占拠部位として矛盾しないものと思われた.次に発達程度との関連を検討した.F1,F2,F3における静脈瘤容積(ml)はそれぞれ,0.82±0.91,6.92±4.17,10.14±7.34であり,F1に比べ,F2(p=0.0010),F3(p=0.0003)で有意に高値であった.表面性状の類似性については,69.2%の症例が部分的一致あるいはそれ以上として判定され,読影者の一致率も良好であった(κ0.6195).このように3D画像によって,胃静脈瘤の占拠部位や発達程度,表面性状の予測が可能になるものと考えられた.3.胃静脈瘤排血路の血行動態と3D超音波所見の関連:胃腎短絡の血行動態は内視鏡的な静脈瘤程度を反映していることが報告されている.本研究においても,排血路流量の計測値が得られた13例で,静脈瘤容積と排血路流量に正の相関(r=0.5010)が見られた.
【結語】
体外走査超音波による三次元映像は胃静脈瘤の検出に優れ,その内視鏡所見や排血路の血行動態を良好に反映していた.本法は胃静脈瘤に対して,内視鏡の代替検査法として期待される.