Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
ワークショップ6 消化器疾患診療における超音波Elastography の有用性

(S264)

自己免疫性肝炎のVirtual Touch Tissue Quantification

Virtual Touch Tissue Quantification of Autoimmune Hepatitis

友國 淳子1, 詫間 義隆2, 守本 洋一2, 高畠 弘行2, 山本 博2, 佐原 朗子1, 石坂 克己1

Junnko TOMOKUNI1, Yoshitaka TAKUMA2, Yoichi MORIMOTO2, Hiroyuki TAKABATAKE2, Hiroshi YAMAMOTO2, Akiko SAHARA1, Katumi ISHIZAKA1

1財団法人倉敷中央病院臨床検査科, 2財団法人倉敷中央病院消化器内科

1Clinical Labolatory, Kurashiki Central Hospital, 2Hepatology and Gastroenterology, Kurashiki Central Hospital

キーワード :

【目的】
自己免疫性肝炎(以下AIH)は,慢性の経過をたどるものと急性発症し重篤化するものなど病態が複雑で明確な重症度判定基準が存在しないため,その進行度や重症度評価に苦慮する.また,線維化を主とするAIHの進行度に対する硬度測定の有用性についてもほとんど報告されていない.われわれは,超音波による組織せん断弾性波速度(m/s)によるVirtual Touch Tissue Quantification(以下VTTQ)を用いてAIHの重症度評価,治療効果への有用性を前向きに検討した.
【対象と方法】
2010年8月〜2011年11月までに当科でAIHと診断され肝生検を行った35例.使用機種シーメンス社製S2000にてVTTQを経時的に測定し血液化学データ(T-Bil, AST, ALT, ALB, PLT, PT,ヒアルロン酸,4型コラーゲン7S)と組織所見(炎症パラメータはinterface hepatitis, centrilobular nercrosis, plasma cell infiltrationの3項目をそれぞれ0-3に点数化,線維化パラメータのfibrosisは新犬山分類を基に0-4に点数化)および病態との関連性を検討しAIHの急性型の重症度評価と慢性型の進行度評価を行った.
【結果】
AIH35例(平均年齢60.1歳,男性8例,女性27例)のうち急性型25例,慢性型10例.慢性型においてはVTTQはfibrosis(r=0.662, p<0.037), PLT(r=-0.867, p=0.001), ヒアルロン酸(r=0.673, p=0.033),4型コラーゲン7S (r=0.857, p=0.002)など線維化パラメータと有意な相関を認めたが炎症パラメータと有意な相関を認めなかった.さらに高度線維化例(F3以上)のVTTQによる判別能(AUROC)は0.917,cutoffは2.48 m/sで感度83%,特異度100%であった.急性型では炎症,線維化パラメータいずれも有意な相関はみられなかったが戸田が2004年に提唱した重症度判定基準の重症度と有意な相関が見られた(r=0.494,p=0.012).さらに重症度判定基準中等症以上のVTTQによる判別能(AUROC)は0.817,cutoffは2.19m/sで感度100%,特異度71%であった.また急性型において,経時的にVTTQを測定した結果,全例薬剤投与後に血液生化学データ,臨床症状の改善に並行して低下した.
【考察】
急性ウイルス性肝炎においてALTと肝硬度が相関すると報告されているがAIHは線維化や壊死炎症などの多彩な病態が混在しており,特に急性型においては壊死炎症が強く組織所見の重症度評価が困難であった.自験例では劇症化など重篤な転帰を認めた症例がなく寛解に至ったため実際の重症度評価はできなかったがVTTQ が重症度判定基準と関連しており急性AIHの病態の一面を反映している可能性が示唆された.
【結語】
VTTQは急性AIHの重症度予測,治療後の効果判定,また慢性AIHにおいては線維化などの病態把握の一助となると期待される.