黒田 英克¹, 小野寺 美緒¹, 及川 隆喜¹, 三上 有里子^{1, 2}, 武田 智弓^{1, 2}, 木村 義信^{1, 2}, 諏訪部 章², 滝川 康裕¹, 鈴木 一幸¹

Hidekatsu KURODA¹, Mio ONODERA¹, Takayoshi OIKAWA¹, Yuriko MIKAMI^{1, 2}, Chiyumi TAKEDA^{1, 2}, Yoshinobu KIMURA^{1, 2}, Akira SUWABE², Yasuhiro TAKIKAWA¹, Kazuyuki SUZUKI¹

¹岩手医科大学内科学講座　消化器・肝臓内科分野, ²岩手医科大学臨床検査医学講座　中央臨床検査部

¹Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Iwate Medical University, ²Department of Laboratory Medicine, Iwate Medical University

キーワード :

【背景・目的】
急性肝炎急性期に肝硬度が上昇するという報告が散見されている．今回我々は,VTTQを用いて肝硬度変化を経時的に測定し,その臨床的意義について検討した．
【対象・方法】
対象は2010年4月から2011年11月まで岩手医大消化器肝臓内科にて入院加療した急性肝炎31例（うち重症型（AHS）6例,劇症肝炎（FH）4例）を対象とした．成因はウイルス性9例,薬物性4例,自己免疫性4例,成因不明例14例．男性11例,女性20例,平均年齢48.1歳．使用機種はACUSON S2000 （持田シーメンスメディカルシステム）．第1病日から5日毎に,肝右葉の同一部位においてVTTQを施行し剪断弾性波の伝搬速度（Vs）値を測定した．病期をAST,ALTの値により3期（Ⅰ期：AST,ALTのピーク,Ⅱ期：ピークの50％以下,Ⅲ期：2 ULN以下）に分類し,Vs値と肝機能の変遷,重症度を比較した．また,生命予後別の急性期（入院時から14日間）におけるVs値の推移パターンを比較した．
【結果】
（1） 対象全体のVs値の平均値は,Ⅰ期：2.21±0.53m/s,Ⅱ期：1.81±0.54m/s,Ⅲ期：1.41±0.24m/sであり,肝機能の改善に伴いVs値の有意な低下を認めた（P＜0.01）．
（2） 重症度別の入院時Vs値は,AH：1.72±0.37m/s,AHS：2.35±0.54m/s,FH：2.82±0.39m/sであり,肝炎重症度に伴い有意に高値を示した（P＜0.01）．
（3） 生死別に急性期のVs値の経時的変化を比較すると,生存例（n=32）では1.99±1.21m/sから1.78±1.11m/sとVs値の経時的低下を認めたのに対し（P＜0.05）,死亡例（n=3）では2.64±0.35m/sから3.28±0.66m/sとVs値の有意な経時的上昇を認めた（P＜0.01）．
【結語】
急性肝炎ではVs値が上昇し,重症度に伴い有意に高値を示した．急性肝炎におけるVs値は重症度や病態を反映する新たな予後予測指標となる可能性が示唆された．