英文誌(2004-)
特別企画 消化器
ワークショップ1 超音波内視鏡の進歩−診断と治療への応用−
(S259)
当院での超音波内視鏡ガイド下膵仮性嚢胞ドレナージ術の現況
Endoscopic ultrasound-guided pancreatic pseudocyst drainage, Tokyo Medical University experience.
土屋 貴愛, 糸井 隆夫, 森安 史典
Takayoshi TSUCHIYA, Takao ITOI, Fuminori MORIYASU
東京医科大学消化器内科
Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University
キーワード :
【背景と目的】
近年の超音波内視鏡機器,技術の発達によって超音波内視鏡ガイド下膵仮性嚢胞ドレナージ術(ECD)の有効性,安全性が多数報告されている.しかし,実際の手技,使用する処置具は本邦ではいまだ胆膵内視鏡処置具を代用している事が多く.標準化には至っていない.今回これまでに当院で経験したECDの方法,成績について報告する.
【方法】
治療適応は,期間や大きさに関わらず,保存的治療にて軽快しない有症状,出血,感染例としている.膵管狭窄が原因となっている嚢胞には後日膵管ステントを追加留置している.内・外瘻の選択は,当初非感染性嚢胞は内瘻を,感染性嚢胞は外瘻から二期的に内瘻としていたが,最近では一期的に内・外瘻同時留置を行い,治療回数,患者負担の軽減を図っている.2009年まではプラスチックステントを主に用いていたが,2010年よりメタリックステントを留置し大口径の瘻孔から短期間で確実なドレナージが得られ,症例によってはステント内にscopeを挿入する事でnecrosectomyも可能となった.
【成績】
2004年から現在までECDを64例に施行した.プラスチックステントを用いた症例が47例,ドレナージ方法は外瘻のみ5例,外瘻→内瘻3例,内瘻のみ7例,内瘻→内外瘻2例,内外瘻29例であった.メタリックステントを用いた症例は17例であった.全体の手技成功率は98.4%(63/64),初回処置奏功率は93.7%(59/63),最終処置奏功率は100%(63/63),偶発症率は3.1%(2/64)で腹膜炎とステントの迷入であった.ドレナージ法別の初回処置奏功率はプラスチックステントで外瘻が62.5%,内瘻が77.8%,内外瘻96.6%,メタリックステント100%であった.メタリックステント留置した6例においてnecrosectomyを施行した.
【結語】
膵仮性嚢胞に対するECDは有効な治療手段であり,内外瘻同時留置,メタリックステント留置がドレナージ法として優れていた.さらに安全確実なドレナージを行うため,今後処置具の開発が望まれる.