Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
ワークショップ1 超音波内視鏡の進歩−診断と治療への応用−

(S258)

Contrast-enhanced harmonic EUSによる膵腫瘍の鑑別診断能に関する検討

Contrast-enhanced harmonic EUS for the differential diagnosis of solid pancreatic masses.

杉森 一哉1, 金子 卓1, 三輪 治生1, 高 蓮浩1, 田邊 暢1, 沼田 和司1, 田中 克明1, 前田 愼2

Kazuya SUGIMORI1, Takashi KANEKO1, Haruo MIWA1, Ryonho KOU1, Tooru TANABE1, Kazushi NUMATA1, Katsuaki TANAKA1, Shin MAEDA2

1横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター, 2横浜市立大学医学部消化器内科

1Gastroenterological Center, Yokohama City University Medical Center, 2Division of Gastroenterology, Yokohama City University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
消化管ガスによる影響が少ないendoscopic ultrasonography (EUS) は,膵腫瘍の診断に不可欠な検査法である.近年,低音圧でも共振する第二世代超音波造影剤Sonazoidが市販され,電子走査式EUSとcontrast-enhanced harmonic imagingに対応した超音波観測装置の登場により,低音圧を使用するEUSでも膵内の微小循環および実質染影像が観察可能となった.
【目的】
Contrast-enhanced harmonic endoscopic ultrasonography (CH-EUS) におけるvascular patternによる膵腫瘍の鑑別診断能を検討する.
【方法】
2009年3月から2011年11月までに,腫瘍摘出術やEUS-FNA等により組織学的確定診断が得られている膵腫瘍94例(膵癌69例,内分泌腫瘍11例,転移性膵腫瘍8例,慢性膵炎6例)を対象とした.使用機器はOLYMPUS GF-UE260,ALOKA ProSound α10を使用し,fundamental B-mode で病変のtargetingを行った後,Extended Pure Harmonic Detection mode(MI値:0.35)でSonazoid 0.015ml/kgの経静脈的bolus投与を行い,造影前後の所見を動画に記録した.評価は以下の4つのvascular patternに分類し,膵腫瘍の組織診断と対比した.Type I:早期相で周囲膵実質よりhypervascular.Type II:早期相でmoderate vascularで,後期相でも造影効果が持続.Type III:早期相でmoderate vascularで,後期相でwash outする.Type IV:早期相でhypovascular.なお,SonazoidはEUSでの使用に対し保険承認されていないため,当院倫理審査委員会で承認を受け,患者の同意を得た上で検査を行い,Sonazoidの購入は科学研究費で賄った.
【結果】
膵癌の49.3% (34/69) がtype III,43.5% (30/69) がtype IVに判定され,一方,他の腫瘍の主なvascular patternは内分泌腫瘍がtype I (8/11),慢性膵炎がtype II (6/6)であった.転移性膵腫瘍は原発巣のvascularityを反映し,様々なvascular patternを呈していた.Type IIIもしくはtype IVのvascular patternにより膵癌と診断した場合の感度,特異度,正診率はそれぞれ92.8%,88%,91.5%であった.膵癌のうち分化度が判明している46例を検討したが,分化度とvascular pattern に関連性はなかった.
【結論】
Sonazoidを用いたCH-EUSにおいて,type III及びtype IVのvascular patternは膵癌に特徴的な所見であり,この所見を捉える事が膵癌の診断に重要である.