Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション11 超音波による肝癌スクリーニングの現状

(S252)

慢性肝疾患に対する超音波検査による肝細胞癌スクリーニングの現状と今後

Current status and future of screening of heptocellular carcinoma in chronic liver disease by ultrasound

今井 康晴1, 安田 清美2, 山田 典栄2, 森安 史典1

Yasuharu IMAI1, Kiyomi YASUDA2, Norie YAMADA2, Fuminori MORIYASU1

1東京医科大学消化器内科, 2清川病院内科

1Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University, 2Internal Medicine, Kiyokawa Hospital

キーワード :

【目的】
肝癌診療ガイドライン 2009年版は,超高危険群に属するB型肝硬変,C型肝硬変患者は3〜4 カ月に1 回の超音波検査,高危険群に対しては6ヵ月に1回の超音波検査を行うことを提案しているが,未だに確立はされていない.今回,我々は慢性肝疾患に対する超音波検査による肝細胞癌スクリーニングの現状について解析し,今後の課題について考察した.
【対象と方法】
2007年1月から2009年12月までの間に東芝メディカルシステムズ社製APLIO XGを用いて慢性肝疾患に対する肝細胞癌スクリーニングを行った延べ2640件のうち,肝腫瘤を指摘された126例,164結節を対象とした.男性 72例,女性 54例.平均年齢 62.7±12.1歳,平均腫瘤径は1.3±0.9cmであった.背景肝疾患は,HCV 97例,HBV 21例,Alcohol 4例,PBC 2例,AIH 2例.
【結果と考察】
(1)期間中初回発見時(発見時)の臨床診断:肝細胞癌 10結節,肝細胞癌疑い 10結節,異型結節疑い 5結節,乏血性肝腫瘍 4結節,肝膿瘍疑い 1結節,肝腫瘤 6結節,肝腫瘤疑い 93結節,血管腫 8結節,血管腫疑い 22結節,その他 5結節.(2)発見時に肝腫瘤疑いと診断された93結節:平均腫瘤径は1.0±0.4cm.造影CTを行った74結節中70結節で肝腫瘤は描出されなかったが,そのうち4結節が最終的に肝細胞癌と診断された.今後は,EOB-MRIを精査に用いることでより早期に発見できる可能性が示唆された.(3)発見時に0.9cm未満であった61結節:発見時に肝細胞癌と診断された結節はなかったが,最終的に5結節が肝細胞癌と診断された.(4)最終的に肝細胞癌と診断された23結節:発見時の臨床診断は,肝細胞癌 10結節,肝細胞癌疑い 1結節,異型結節疑い 4結節,肝腫瘍 2結節,肝腫瘍疑い 4結節,肝膿瘍疑い 1結節,乏血性肝腫瘍 1結節.発見から肝細胞癌診断までの平均期間は187±258.5(0〜884)日間で,期間別に発見時腫瘍径をみると,発見時に肝細胞癌であったのが10結節,3.2±1.8cm,30〜180日後に診断されたのが6結節,1.9±1.6cm,181日間以上が7結節,1.3±0.6cmで,発見時と181日間以上の腫瘍径に有意差を認めた(P<0.05).肝細胞癌スクリーニングの期間としては,6ヵ月以内が妥当であると考えられた.肝細胞癌の診断方法は,造影CT 16結節,EOB-MRI 3結節,Angio-CT 2結節,Biopsy 2結節.治療は,RFA 9結節,TACE 7結節,肝切除 4結節,PEIT,無治療,不明が各々1結節.
【結論】
慢性肝疾患に対する超音波検査による肝細胞癌スクリーニングは6ヵ月以内の間隔で行い,1cm前後の肝腫瘤が発見された場合,EOB-MRIによる精査を考慮する必要がある.2010年11月からは,超音波検査で検出された肝腫瘤に対して積極的にEOB-MRIによる精査を導入しており,その成績についても報告する.