Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション9 消化管疾患における超音波検査の現状と今後

(S249)

どうする消化管疾患の超音波診断?-技師の立場から-

How did I become the master of gastrointestinal ultrasound?-an opinion on the way of learning gastrointestinal US from the viewpoint of a sonographer-

長谷川 雄一, 浅野 幸宏

Yuichi HASEGAWA, Yukihiro ASANO

成田赤十字病院検査部 生理検査課

Department of Clinical Laboratory, Narita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
昨年の第84回本学術集会において,「消化管超音波検査を普及させるには」というテーマのもと,消化管エコー研究会の活動を中心に全国規模のアンケート結果から,その現状と問題点を考察し報告した.今回は,当施設での消化管疾患における超音波検査がいかに臨床に認められ,診療に寄与する報告が出来るようになってきたかについて,現状を踏まえながら振り返ってみたい.
【当院の現状】
当院は第3次救命救急センターを擁する病床数719床の地域の中核医療機関である.検査部には,41名の技師が在籍し,そのうち15名が生理検査課に在籍する.当院の特徴のひとつとして超音波検査の24時間365日緊急対応があげられ,救急診療体制に対応するべく専属技師が日勤・夜勤体制で常駐している.その検査内容は幅広く,まさに頭の上から足のつま先までと全身の疾患に対応している.その中でも急性腹症における消化管疾患の割合は高く,消化管の超音波診断には特に力を注いで取り組んでいる.
【教育の実際(技師に対する)】
生理検査課に配属されることは,即ち夜間を含めた緊急検査に対応できる超音波検査技術の習得が不可欠ということである.もちろんこれを知り,転属を辞退する者も存在する.人間ドックの受診者から始めるOJTは,慢性疾患受診者などの一般患者を経て,急性腹症への患者対応へと進む.人間ドックの段階でつまずく者もいれば,順調に教育課程を進んでいく者もいる.いずれも技師本人の素質や能力に依るものが大きく,こちらの都合で配属者を選定できないのは,全国共通の悩みの種であろう.しかし順調に教育課程を進んできた者でさえ,消化管疾患に関しては苦手意識を隠せない.他臓器と異なり正常像の把握が困難であること,ガス像の存在,蠕動による画像条件の変化などをその理由としている.
【教育の実際(医師に対する)】
医師側に対する教育という表現が正しいか否かはさておき,消化管疾患における超音波検査の有用性を認識してもらえれば,臨床側からの検査オーダーは必然的に増加してくると考えた.我々からの主だった行動は,以下の通りである.①内視鏡検査適応症例については,施行前に超音波検査を行い,層構造や罹患範囲の観察などを詳細に行うことにより,内視鏡では得られない貫壁情報と壁外周囲の情報を加えることにより,超音波検査の有用性を訴えた.②急性腹症や悪性疾患などの外科手術症例は,術前超音波像と手術標本との対比を行い,臨床側への有用性の理解を深めることに努めた.③研修医に関しては,時間の許す限り超音波検査に同席してもらい,画像診断における超音波検査の有用性(特に消化管疾患)を肌で感じて頂き,将来の活躍に期待している.これらの地道な行動により,臨床側とのコミュニケーションの強まりと共に,消化管エコーへの認識を深めることができ,結果として信頼に基づいた超音波検査の依頼を得るまでに至った.
【今後の展望】
関連書籍や記事も今や選択することが可能なほど多くのものが出揃ってきたが,依然まゆつば物の記載も多いのが現状ではないか.有用性の明確化には多くの書籍に取って代わるだろう,日本超音波医学会の消化管診断基準小委員会の公告に期待している.標準的走査法に加え,画像解析に至るまで全国的な評価方法の統一化が図られれば,スタンダードな検査として認知されると考える.今回の報告が,今後の消化管疾患に対する超音波診断の普及の一助となれば幸いである.