Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション1 腹部超音波検査における要精査の基準と検診間隔

(S246)

慢性膵炎とIPMNにおける経過観察中発生膵癌の検討

Pancreatic cancer risk of patients during follow-up period of chronic pancreatitis or IPMN

高橋 邦幸, 真口 宏介, 小山内 学

Kuniyuki TAKAHASHI, Hiroyuki MAGUCHI, Manabu OSANAI

手稲渓仁会病院消化器病センター

Center for Gastroenterology, Teine Keijinkai Hospital

キーワード :

【目的】
膵癌高危険群である慢性膵炎(CP)および膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の経過観察中に発生した膵癌例について検討する.
【対象と方法】
2011年3月までに当科入院加療もしくは内視鏡検査歴のあるCP613例と当科で診療したIPMN601例を対象とした.検討項目は,1)膵癌発生頻度と内訳,2)発生部位,3)診断時期と発見契機となった画像検査,4)治療内容と予後,5)膵癌発見前の見直し画像所見,とした.
【結果】
1)膵癌発生は,CP9例(1.5%)(男女比7:2,年齢51~80歳 平均66.9),IPMN11例(1.8%)(5:6,56~76,66.5,分枝型11)であった.2)CPではPh3,Pbt6,IPMNではPh6,Pbt5であった.IPMNでは明らかに離れて発生したのは8例であり,うち7例がIPMNの尾側に発生しており,3例は隣接発生であった.3)膵癌発見までの期間は,CPでは平均33.3ヵ月(8.4~71.8),IPMNでは34.0ヵ月(4.7~92.6)であった.膵癌発見契機となった画像検査は,CPでUS2,CT7であり,すべて腫瘍を描出していた.IPMNではUS3,CT5,MRCP2,上部消化管内視鏡検査1であり,これらのうち発見時に腫瘍を直接描出できたのはUS2,CT4であった.4)CPでは切除5,非切除4であり,平均腫瘍径28.7mm,TS1は2(22.2%),fStageはI 2,III 2,IVa 1,IVb 4であった.IPMNは切除7,非切除4であり,平均腫瘍径29.2mm,TS1は3(27.3%),fStageI 1,III 5,IVa 2,IVb 3であった.膵癌診断からの平均生存期間はCPで18.8ヵ月(原病死6,無再発生存2,再発生存1),IPMNは23.0ヵ月(原病死4,無再発生存4,再発生存3)であった.5)膵癌発見直前の画像検査時期は,CPで半年以内4例,1年以内3,1年以上1,詳細不明1であり,IPMNでは半年以内6,1年以上5であった.これらの画像検査の見直しにて膵癌の存在を疑い得たのは半年以内に検査をしていたCP4例,IPMN6のうちそれぞれ3(75.0%),4(66.7%)であり,検査内容はCT6,MRCP1であった.1年以内に検査をしていたCP3例では,うち1例(33.3%)のみであり,検査内容はCTであった.1年以上前に検査をしていた例では見直し画像にても膵癌の存在を疑い得たものはみられなかった.
【結論】
慢性膵炎とIPMNの経過観察中の膵癌の発生率は1.5%,1.8%であった.発見契機となった画像検査は,CTが最も多く,USは,CP,IPMNでそれぞれ2例(22.2%),3例(27.2%)のみであった.また,画像所見の見直しからCP,IPMNとも,少なくとも半年間隔の経過観察が必要である.