Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション1 腹部超音波検査における要精査の基準と検診間隔

(S245)

胆道領域における腹部超音波がん検診判定基準の有用性と問題点

Efficacy and problems of the Category classification of ultrasonographic findings for bile duct cancer screening.

岡庭 信司1, 岩下 和広2, 井上 貞孝2

Shinji OKANIWA1, Kazuihiro IWASHITA2, Sadataka INOUE2

1飯田市立病院消化器内科, 2飯田市立病院放射線科

1Gastroenterology, Iida Municipal Hospital, 2Radiology, Iida Municipal Hospital

キーワード :

【始めに】
腹部超音波は肝臓・胆道・膵臓といった消化器領域の難治がんの早期診断には欠くことのできない検査法である.しかしながら,がん発見時の所見の記載方法が統一されていないことなどにより,がん検診としての精度や有効性の評価が十分行われていないのが現状である.そこで2011年にがん検診の精度評価を目的とした腹部超音波がん検診の判定基準(カテゴリー分類)が消化器がん検診学会より提示された.
【目的】
胆道領域における腹部超音波がん検診判定基準の有用性と問題点につき検討する.対象と方法1)ドック受診者における検討2011年8月から12月までの当院人間ドックの超音波受診者790名に対して,腹部超音波がん検診の判定基準を用いた判定を行い,カテゴリーの分布,要精検率(カテゴリー3〜5の頻度)および,カテゴリー3と判定された所見の内訳につき検討した.2)手術例における検討2003年4月から2011年12月までの期間に当院にて切除した胆道癌のうち,初回超音波画像の詳細な検討が可能であった胆嚢癌21例(m癌3,mp癌2,ss癌16)と胆管癌21例(m癌1,fm癌3,ss癌14,その他3)につき超音波所見を検討した.なお,今回は判定基準公表から十分な期間がなかったため,要精検者の超音波所見と精検結果は検討項目から除外した.
【結果と考察】
1)ドック受診者における検討胆嚢のカテゴリー分類は,カテゴリー0:3例,1:604例(76.5%),2:156例(19.7%),3:25例(3.2%),4:2例,5:0例であり,要精検率は3.4%であった.カテゴリー3の所見は,有茎性ポリープ9例,びまん性壁肥厚4例,虚脱1例,腫大3例,デブリ7例,結石壁評価不能1例であった.有茎性ポリープの9例はいずれも桑実状を呈しており,桑実状の内部エコーをカテゴリー3の除外所見とすると要精検率は2.0%に減少した.胆管のカテゴリー分類は,カテゴリー0:3例,1:768例(97.2%),2:2例,3:17例(2.3%),4:0例,5:0例であり,要精検率は2.2%,カテゴリー3の所見は胆管拡張16例,壁肥厚1例であった.2)手術例における検討胆嚢癌の初回超音波所見は,カテゴリー3が6例(デブリ6例)28.6%,カテゴリー4は7例(広基性隆起3例,限局性壁肥厚2例,亜有茎性・>10mm1例,びまん性壁肥厚・層構造やRAS所見なし1例)33.3%,カテゴリー5は8例(広基性・壁不整あり8例)38.1%であり,カテゴリー1や2と判定される癌は認めなかった.胆管癌の初回超音波所見は,カテゴリー3が6例(胆管拡張5例,胆嚢腫大4例,デブリ4例)28.6%,カテゴリー4は7例(腫瘤像5例,壁肥厚・粘膜面不整あり2例)33.3%,カテゴリー5は8例(腫瘤像・層構造不整あり8例)38.1%であり,カテゴリー1や2と判定されるものは認めなかった.結語 カテゴリー分類による要精検率は胆嚢3.4%,胆管2.2%であり,要精検者の増加とはならないと考えられる.さらに,手術例ではカテゴリー1あるいは2と判定される症例は認めず,胆嚢癌の28.6%がカテゴリー3,カテゴリー4以上が71.4%,胆管癌の28.6%がカテゴリー3,カテゴリー4以上が71.4%であったことから胆道癌の拾い上げに有用と考えられた.一方で,カテゴリー3と判定された胆嚢の有茎性ポリープはいずれも桑実状を呈しており,カテゴリー3の判定基準のさらなる絞込みが可能と考えられる.