Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
パネルディスカッション1 腹部超音波検査における要精査の基準と検診間隔

(S244)

慢性肝疾患における超音波検査とEOB造影MRIを用いた肝癌スクリーニング

Surveillance of hepatocellular carcinoma by combination of ultrasonography and EOB-enhanced MRI

今井 康陽1, 小来田 幸世1, 澤井 良之1, 井倉 技1, 福田 和人1, 関 康2, 兵頭 朋子3, 岡田 真広3, 村上 卓道3, 熊田 卓4

Yasuharu IMAI1, Sachiyo KOGITA1, Yoshiyuki SAWAI1, Takumi IGURA1, Kazuto FUKUDA1, Yasushi SEKI2, Tomoko HYOUDOU3, Masahiro OKADA3, Takamichi MURAKAMI3, Takashi KUMADA4

1市立池田病院消化器内科, 2市立池田病院放射線科, 3近畿大学医学部放射線診断学, 4大垣市民病院消化器内科

1Department of Gastroenterology, Ikeda Municipal Hospital, 2Department of Radiology, Ikeda Municipal Hospital, 3Department of Radiology, Kinki University School of Medicine, 4Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインによる我が国の肝癌サーベイランスアルゴリズムでは,高危険群で6ヶ月毎の超音波検査,超高危険群であるB型およびC型肝硬変においては3-4ヶ月毎の超音波検査とoption検査として6-12か月毎のCT/MRI検査が推奨されている.一方肝細胞癌の診断において,EOB造影MRIの有用性が報告されている.今回,腹部超音波所見とEOB造影MRIの所見を対比し,慢性肝疾患における超音波検査とEOB造影MRIの肝癌スクリーニングにおける位置づけを検討した.
【方法】
1)組織学的に診断した乏血性高分化型肝細胞癌(早期肝細胞癌と考えられる)33結節のB-mode超音波所見,EOB造影MRI肝細胞相所見を比較検討した.2)EOB造影MRIの肝細胞相で円形の低信号を呈する乏血性結節で,2回以上EOB造影MRIで経過を追えた慢性肝疾患68例における160結節を対象として多血化率を検討した.MRI肝細胞相は20分後の脂肪抑制併用3D-T1強調で撮像した.EOB造影MRI,造影CT,造影US,CTHA/CTAPのいずれかで多血化したものは観察終了とし,多血化に関与する因子,観察期間中の最終MRIまでの腫瘍容積倍加時間(tumor volume doubling time; TVDT)を検討した.
【結果】
1)乏血性高分化型肝細胞癌33結節のスクリーニングB-mode超音波所見は,低エコー21結節,高エコー4結節,モザイク3結節,同定困難でVolume Navigation下に肝生検診断5結節であった.EOB造影MRI肝細胞相では29結節(93.5%)が低信号,2結節(6.5%)が等信号であった.2)EOB造影MRI肝細胞相で低信号の乏血性結節160結節の観察期間中央値は342日.観察中に多血化は50/160結節(31%)にみられた.初回MRIでの結節の最大径は2-34mm(中央値7.6mm)で,多血化群と非多血化群間に有意の差は見られなかった.Cox比例回帰分析にてT2WI高信号(HR 8.7; 95%CI: 3.6-20.8),局所治療歴(HR 5.0; 95%CI: 1.8-13.6),Child-Pugh class B(HR 3.6; 95%CI: 1.4-9.5),HBV感染(HR 0.2; 95%CI: 0.05-0.6)が多血化に関与する独立因子にとして抽出された.また,多血化結節が非多血化結節に比して有意にTVDTが低値であった.ROC解析でのTVDTのカットオフ値は381日で,TVDT381日以下のEOB造影MRI肝細胞相低信号の乏血性結節の1年累積多血化率は53.0%で,TVDT381以上では2.4% であった.
【考察および結論】
慢性肝疾患において,他のEOB造影MRI肝細胞相で低信号を示す乏血性結節,特に増大傾向を示す結節は肝細胞癌である特異性が高いと考えられた.以上の結果から,EOB造影MRIを超音波検査の2次検査あるいは併用することでより効率的な肝癌スクリーニングが可能であると考えられた.検診間隔については,我が国で明確なevidenceがなく,2011年12月(Hepatology54:1987-1997;2011)にヨーロッパより肝硬変において3カ月毎と6カ月毎の超音波検査で肝細胞癌の検出に差がなかったことが報告されている.しかしながら,我が国ではC型肝炎が高齢化し,高齢者では線維化非進展例においても高率に発癌が見られ,我が国独自の年齢も考慮した検診間隔の設定が必要と考えられる.