Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム7 肝腫瘍造影超音波過去5 年の総括と今後の展望

(S241)

肝細胞癌の血流動態の検討

Hepatocellular carcinoma Hemodynamics using Contrast-enhanced Ultrasound with Sonazoid

斎藤 明子, 片桐 聡, 山本 雅一

Akiko SAITO, Satoshi KATAGIRI, Masakazu YAMAMOTO

東京女子医科大学消化器病センター

Institute of Gastroenterology, Tokyo Women’s Medical University

キーワード :

ソナゾイド造影エコーの特徴は,腫瘍の染影の推移を詳細に検討できることである.今回は,肝細胞癌を中心に肝腫瘤性病変の血流動態を検討した.
【方法】
2007年2月〜2011年6月にソナゾイド®を用いて造影エコーを施行し,明瞭な造影所見が得られ,病理組織との対比が可能であった肝細胞癌について動脈相とそれ以後の腫瘍血流の経時変化を観察し,他の肝腫瘍との相違について検討した.検討項目は染影の程度と推移,低輝度変化 (washout) を認めた時間である.腫瘍の染影度は周囲肝と比較し,高輝度(H),等輝度(I),低輝度(L)に分類した.症例の内訳は肝内胆管癌9結節,肝細胞癌96結節 (低分化型4,中分化型61,高分化型31),多血性良性結節25結節 (限局性結節性過形成16,アルコール性過形成結節4,血管筋脂肪腫4,肝細胞腺腫1),大再生結節10結節である.造影方法は,ソナゾイド® 0.01mg/mlを末梢静脈より用手的に投与し,動脈相(pure arterial phase)とそれに続く染影像の変化を経時的に30分まで観察した.使用機種は主としてProSound α10, F75 (ALOKA),他にSequoia 512 (SIEMENS),Aplio XG (TOSHIBA) を使用した.
【結果】
肝細胞癌低分化型は,2結節は高輝度に染影され3分以内にwashoutされた(H-L-L).他の2結節の染影は不良で,うち1結節は高分化型との鑑別が困難であった.中分化型は,全て動脈相で高輝度(中等度〜高度)に染影され,10分以内にwashout された(H-L-L).高分化型の血流動態は多様であり,washoutを認めた4結節(H-L-L, I-L-L)のうち10分以内であったのは2結節で,他は20〜30分と遅延した.過形成結節や再生結節との鑑別困難なH-I-I , I-I-I pattern は9結節に認められた.動脈相で低輝度であった18結節は門脈血の流入後も低輝度のまま推移する9結節(L-L)と,等輝度に変化する9結節(L-I)を認め,うち2結節は最終的にwashoutされた(L-I-L).
一方,肝内胆管癌は,動脈相で1結節を除き高輝度(軽〜中等度) に染影され,3分以内にwashoutされた.良性結節の染影はいずれも明瞭であった.17結節はwashoutを認めなかったが,8結節は10分以内にwashout され,早期にwashoutされた2結節は肝細胞癌との鑑別が問題となった.大再生結節は,1 結節を除き動脈相は等輝度でwashoutを認めなかった.
【結論】
肝腫瘍の血流動態を,肝細胞癌を中心に検討した.ソナゾイド造影エコーは動脈相とその後の血流変化の推移を明瞭に識別できる有用な検査である.