Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム7 肝腫瘍造影超音波過去5 年の総括と今後の展望

(S239)

小型肝癌の診断におけるソナゾイド造影超音波:CTHAやMRIとの比較からみた5年間の総括

Diagnosis of small hepatocellular carcinoma with contrast-enhanced ultrasound with Sonazoid: comparison of CTHA and MRI

高橋 正憲, 丸山 紀史, 嶋田 太郎, 亀崎 秀宏, 関本 匡, 近藤 孝行, 金井 文彦, 横須賀 收

Masanori TAKAHASHI, Hitoshi MARUYAMA, Taro SHIMADA, Hidehiro KAMEZAKI, Tadashi SEKIMOTO, Takayuki KONDO, Fumihiko KANAI, Osamu YOKOSUKA

千葉大学医学部附属病院消化器内科

Department of Medicine and Clinical Oncology, Chiba University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
2007年に臨床応用された超音波造影剤ソナゾイドは安全性に優れ,超音波の診断能を飛躍的に向上させた.今回我々は,当院での前向き研究の成績を元に,小型肝細胞癌に対するソナゾイド造影超音波の診断的意義を明らかにし,肝癌診療におけるその役割を総括した.
【方法】
対象は,慢性肝疾患に合併しB-mode超音波で検出された30mm以下の小型肝腫瘤134結節(18.4±5.4mm)である.全例で組織学的診断が得られ,高分化70,中分化45,低分化6,再生結節13であった.造影超音波(APLIO,Toshiba;harmonic imaging,MI0.2-0.3,0.0075ml/kg)では,早期相(-1分),5分,10分,15分の時相を観察した.腫瘤部の造影所見を輝度解析によって定量的に判定し,非腫瘍部肝実質との比較により強造影,等造影,弱造影と分類した.また他の画像診断(CTHA,Infinix Activ,Toshiba,15ml,3ml/s;Gd-EOB-DTPA造影MRI,以下EOB-MRI,Achieva1.5T,Philips,0.1ml/kg,3ml/s)における時相別の腫瘤部造影所見についても同様に検討し,造影超音波所見と比較した.
【結果】
1. 肝癌の分化度診断肝細胞癌77結節(高分化26,中分化45,低分化6)における検討では,早期相での最大造影は全例1分以内に観察され,その所見は強造影64,等造影11,弱造影2であった.強造影を基準とした場合の腫瘍血流検出能は造影超音波(64/77)とCTHA(63/77)で同等で,両者の一致率は98.1%であった.次に強造影を示した64結節において,その後の時相における造影所見の推移について検討した.まず1分の時点で12結節が弱造影を示したが,本所見は高分化肝癌には認められなかった.また中分化肝癌では8/42結節(19.0%)においてのみ見られ,低分化肝癌(4/6,p<0.05)で有意に高率であった.同様に5分,10分相での弱造影所見も,高分化肝癌(7/16,10/16)より中分化肝癌(35/42,p=0.0026;38/42,p=0.0117)において高率であった.なお最大造影時に強造影を示さなかった13結節(高分化10,中分化3)は,全例で1分以降は等造影であった.このように造影超音波所見の時相別変化の解析は肝癌分化度の推定に有用であった.2. 肝癌の早期診断67結節(高分化54,再生結節13)において,造影超音波とEOB-MRIにおける高分化肝癌の診断能を比較検討した.早期相での強造影所見を基準とした場合,高分化肝癌に対する感度,特異度,正診率は,造影超音波では59.3%,100%,67.2%,EOB-MRIでは46.3%,100%,56.7%あった(p=0.1773,p>0.9999,p=0.2130).一方,後期の時相(造影超音波15分相とEOB-MRIの15分相)における弱造影を基準とした場合,高分化肝癌に対する感度,特異度,正診率は,前者では44.4%,100%,55.2%,後者では87.0%,46.2%,79.1%であった.すなわち感度(p<0.0001)と正診率(p=0.0032)はEOB-MRIが,特異度(p=0.0052)は造影超音波が優れており,両者は相補的な立場にあることが示された.高分化肝癌に対する両画像の診断能をROC曲線(Area under the curve)で比較すると,早期相では造影超音波(0.8316,p=0.0101)がEOB-MRI(0.6659)よりも有意に優れていたが,後期の時相では造影超音波(0.7225)とEOB-MRI(0.7347)は同等であった(p=0.8814).
【結論】
ソナゾイド造影超音波は,肝癌に対する画像診断としてCTHAと同等の優れた腫瘍血流検出能を有する.また造影所見の時相別推移を観察することで分化度の推定が可能となる.さらに肝癌の早期診断において,造影超音波はEOB-MRIと同等以上の診断能を示した.このように造影超音波は,肝癌の診断において簡便な精密検査として位置づけられる画像診断である.今後は,本法を軸とした肝癌診療体系の構築が望まれる.