日下部 篤宣¹, 宮木 知克², 野尻 俊輔², 飯尾 悦子², 松浦 健太郎², 新海 登², 城 卓志²

Atsunori KUSAKABE¹, Tomokatsu MIYAKI², Shunsuke NOJIRI², Etsuko IIO², Kentaro MATSUURA², Noboru SHINKAI², Takashi JOH²

¹名古屋第二赤十字病院消化器内科, ²名古屋市立大学大学院医学研究科消化器・代謝内科学

¹Department of Gastroenterology, Nagoya Daini Red Cross Hospital, ²Department of Gastroenterology and Metabolism, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences

キーワード :

【背景】
肝癌（HCC）のラジオ波焼灼療法（RFA）において,穿刺位置は治療効果に影響する重要な因子である．通常用いられる2D-USでは2次元スライス像が得られるのみで,スライスの厚み方向の情報が得られない．このため,穿刺針が腫瘍中心部からずれることで焼灼が不十分になることを経験する．近年,US装置の発達により3D画像,更にはそれに時間的変化の情報を加えた4D （リアルタイム3D）画像が簡便に得られるようになった．今回,4D-USガイド下で穿刺することにより,2D-USによるRFAと比較し良好な治療効果が得られるか否かを検討した．
【方法】
2011年1月〜8月に4D-USガイド下RFAを20症例 （20結節）に施行した （4D群）．本研究におけるHCCの定義はdynamic CTで典型的な造影所見を示すものとした．超音波診断装置はAplio XG （東芝メディカルシステムズ社）,4D probeはPVT-375MV （3.5MHz）を用いた．RFA穿刺時には,通常のBモードで得られる電子走査断面と穿刺ラインを含みこの電子走査断面に直交する断面を並列表示できるbiopsy modeを用いた．一方2010年9月〜12月に2D probe （PVT-375BT）を用いてRFAを施行した20症例 （20結節）を4D群の対象とした （2D群）．穿刺針はCool-tip RFを用い症例毎に最適と思われる穿刺針を選択した．RFA効果判定については,RFA施行3日後にダイナミックCTを施行し,西島らが報告したR gradeに従い判定した （R0-R3の4分類：R2:腫瘍全周性に凝固域（+）,しかしablated margin（AM）5mm未満の部位（+）,R3:腫瘍全周性に5mm以上のAM（+）; 肝臓 2008; 49巻5号）．なお効果判定を容易かつ確実に行うために,全例でRFA施行前にリピオドールを含む抗癌剤動注療法 （リピオドールTACE）を施行した．続いてUS診断装置の進歩に伴う4D-USガイド下RFAを評価するため,Aplio500を用いたRFAを数例に行った．
【結果】
4D群と2D群との間で,患者背景 （年齢,性別,病因,肝予備能）,治療対象の腫瘍径 （4D群:14.6 ± 4.2mm,2D群:14.2 ± 3.4mm）,使用穿刺針の種類に差は認められなかった．2D群においてR3凝固域が得られた症例は10例 （50％）であり,残りはR2凝固域しか得られなかった．一方,4D群ではbiopsy modeで2方向から腫瘍中心を穿刺できているかリアルタイムに確認可能であり,その結果,19例 （95％）でR3の良好な凝固域が得られた．このR3凝固域を得られた症例は4D群で有意に高率であった （P＜0.01）．なおAplio500を用いた4D-US biopsy modeはAplioXGと比較し,画質の向上（特にA plane）を認めたが,ディスプレイ表示画像が従来と比べ小さい点が治療に際し問題と思われた．
【結語】
4D-US biopsy modeを用いることでより正確な穿刺が可能となり,2D-USと比較して良好な治療効果が得られた．今後,4D-USの更なる画質及びリアルタイム性の向上に伴って,RFAにおける4D-USの有用性は増すと思われる．