Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 消化器
シンポジウム1 超音波を用いた肝細胞癌の診断および治療法の進歩

(S235)

肝表面の肝細胞癌に対するヒアルロン酸ナトリウムの肝表面局注によるラジオ波焼灼療法

Radiofrequency ablation with sodium hyaluronate for hepatocellular carcinoma located surface of the liver

多田 俊史1, 熊田 卓1, 桐山 勢生1, 谷川 誠1, 豊田 秀徳1, 久永 康宏1, 金森 明1, 竹島 賢治2, 乙部 克彦2, 高橋 健一2

Toshifumi TADA1, Takashi KUMADA1, Seiki KIRIYAMA1, Makoto TANIKAWA1, Hidenori TOYODA1, Yasuhiro HISANAGA1, Akira KANAMORI1, Kenji TAKESHIMA2, Katsuhiko OTOBE2, Kenichi TAKAHASHI2

1大垣市民病院消化器内科, 2大垣市民病院医療技術部診療検査科

1Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital, 2Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
肝表面に位置する肝細胞癌(HCC)に対し経皮的にラジオ波焼灼療法(RFA)を施行する場合,焼灼範囲が腹膜・腹壁や胆嚢等におよぶ可能性があり,従来は人工腹水法や腹腔鏡下RFAなどの方法がとられてきた.われわれはヒアルロン酸ナトリウム(以下ヒアルロン酸)を病変部の肝表面に局注することにより病変部位と腹壁や胆嚢との距離を離しつつ経皮的RFAを試み,良好な治療成績を得たので報告する.
【方法】
腹腔内へのヒアルロン酸注入の安全性を確認後,肝表面のHCC23例,23結節(男性18例,女性5例,年齢71.2±5.6歳,腫瘍径14.1±4.9mm,結節存在部位:S2/S3/S4/S5/S6/S7がそれぞれ2/6/2/5/6/2結節)に対し,PEIT針を用いて超音波ガイド下でヒアルロン酸10-20mLを肝表面に留置する形で注入した.RFA翌日に腹部超音波を,また3〜5日後に効果判定を行った.なお施行前に施設のIRBにより承認を得た上で行った.
【成績】
全例においてヒアルロン酸注入後RFA終了までヒアルロン酸は肝表面に停留し,腹壁や胆嚢と腫瘍の距離は維持されていた.全例でRFA翌日の腹部超音波では肝表面のヒアルロン酸は消失していた.術中・術後とも腹膜や腹壁,胆嚢の熱傷にともなう症状や炎症所見等はみられず,効果判定では肝表面の突出部位も含めて全例が1回の手技で腫瘍全体が十分に焼灼されていた.なお術後1-21ヵ月の経過観察で局所再発を認めた症例はなかった.
【結語】
今回の検討ではヒアルロン酸の経皮的局注により肝表面に留置することにより長時間注入部位に停留し腹壁や胆嚢と肝表面との距離を保つことが可能であった.また,肝表面への留置によりB-mode超音波で肝表面のHCCはより明瞭に描出された.肝表面に位置するHCCに対してRFAを施行する場合,本方法にて腹壁と肝表面との距離を保ちつつ穿刺・焼灼を終えることが十分に可能であり,また手技的に簡便で患者への負担も軽いことから肝表面のHCCに対するRFAの有力な補助手段となる可能性が示唆された.