Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 血管
ワークショップ14 静脈エコーで何処まで観るか?:目的別にみた検査法の工夫

(S227)

災害避難所にて実践する下肢静脈超音波検査(東日本大震災での教訓)

Practice of the lower leg vein sonography in the disaster refuge

佐藤 洋1, 高野 真澄2, 高瀬 信弥3, 山本 哲也4, 八鍬 恒芳5, 石井 克尚6

Hiroshi SATO1, Masumi TAKANO2, Shinya TAKASE3, Tetsuya YAMAMOTO4, Tsuneyoshi YAKUWA5, Katsuhisa ISHII6

1関西電力病院臨床検査部, 2福島県立医科大学検査部, 3福島県立医科大学心臓血管外科, 4埼玉医科大学 国際医療センター中央検査部, 5東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 6関西電力病院循環器内科

1Clinical Laboratory, Kansai Electric Power Hospital, 2Central Laboratory, Fukushima Medical University, 3Department of Cardiovascular Surgery, Fukushima Medical University, 4Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, 5Clinical Physiological Laboratory, Toho University Medical Center Omori Hospital, 6Cardiovascular Medicine, Kansai Electric Power Hospital

キーワード :

 災害避難所で実践する超音波検査は,病院内 災害避難所で実践する超音波検査は,病院内での検査と大きく環境が異なるために現場に即した検査方法が必要となる.災害避難所における肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)予防のための下肢深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)診断を目的とした下肢静脈超音波検査の実践方法について,東日本大震災での避難所検診にて得た教訓をもとに報告する.
 検査対象:下肢にむくみがある,寝てばかり,座ってばかり,足にケガをしている,車中泊2回以上,DVT・PTEの既往,ワーファリンを飲んでいたが薬がなくて服薬していない人を対象とした.さらに余裕があれば,妊婦,分娩後,肥満,高齢,悪性疾患がある方を対象として避難所の中を探しに回った.この適応で検査を行うとおおよそ避難されている方の約1割が対象となった.そして検査対象者の約1割にDVTを認めた.使用装置:携帯型超音波診断装置が必須となる.装置の使用方法には事前に習熟しておく必要がある.現地にて検査開始時に初めて使用説明書読むというようなことは避けたい.バッテリーはあらかじめフル充電しておく.停電している場所や屋外ではバッテリー駆動での検査となるが,現行装置では最長約4時間であるので,携帯型発電機の携行も必要となる.また停電はしていなくとも検査場所と電源コンセントとの距離が離れている場合も多く延長電源ケーブルは必要であった.その他の携行品:エコーゼリーやティッシュペーパー,ゴミ袋などの消耗品は余裕量をもって携行する.体位:椅子に腰掛けた状態を基本とした.寝たきりの人に対しては仰臥位にて立膝位とした.検査者の姿勢:机と椅子が確保できれば机の上に装置を置き,検査者も椅子に腰掛けて検査をしたが,机や椅子の確保が困難な場合には,装置を床に置き,検査者も床に座って検査した.仰臥位の人を検査する場合にも,装置を床に置き,検査者も床に座って検査した.観察範囲:下肢腫脹やDVT既往のある方には両下肢全体の観察を行った.しかしながら下肢腫脹の無い,DVT既往の無い方に対しては避難所の環境(脱衣に伴うプライバシー確保)や時間的な制約(多くの人を検査するため)のために両側下腿のみの観察とならざるをえなかった.検査の実際:下腿観察では腹部検査用コンベックス型探触子にて横断像での圧迫法を基本とした.カラードプラ法やパルスドプラ法を用いることはほとんどなかった.この方法で観察すると両下腿の観察が1-2分で可能であった.検査する場所の明るさに応じてモニタ輝度調整も大切である.検査結果:現行の携帯型超音波診断装置本体にプリンターを内蔵している装置はないので装置に画像を保存することも可能ではあるが,実際には専用シートに血栓の有無や血管径を記載し,血栓が存在した場合にはシェーマにその範囲を記載するにとどまった.まとめ:災害避難所では,時期や場所により刻々と状況が変化する.現地の管理者や他の医療チームと連携して臨機応変に対応することが大切である.