Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 血管
ワークショップ14 静脈エコーで何処まで観るか?:目的別にみた検査法の工夫

(S227)

ひらめ筋静脈血栓の検索・評価・観察

Exploration, evaluation and observation of soleal vein thrombus

應儀 成二

Shigetsugu OHGI

日立記念病院血管外科

Vascular Surgery, Hitachi Memorial Hospital

キーワード :

【目的】
静脈血栓塞栓症に対する早期の診断・治療の観点から,下肢静脈エコーによる下腿筋内静脈の検索が重視されている.しかし,発生頻度の高いひらめ筋静脈に局在する孤立性血栓の診療指針は未だ明確ではない.ひらめ筋静脈において,多数の分枝を正確に検査するため,還流域を考慮した6静脈群検索法を提唱している.この検索法による孤立性血栓の頻度を報告すると共に,血栓評価と経過観察の課題を考察する.
【対象】
2009年6月以降に新規に診断した孤立性血栓31例を対象とした.
【方法】
超音波診断装置は,東芝製で,7.5MHzの探触子を使用した.検査体位は座位・下垂位,あるいは仰臥位・膝立位とし,両下肢を検索した.還流域と流入する深部静脈から,近位静脈(膝窩静脈中部),中央静脈(膝窩静脈遠位:脛骨腓骨静脈),外側静脈(腓骨静脈近位),内側静脈(後脛骨静脈近位),遠位内側静脈(後脛骨静脈遠位),遠位外側静脈(腓骨静脈遠位)の6静脈群を同定し,圧迫法で血栓を診断した.孤立性血栓では,部位(左,右),病期(急性,慢性),形式(単発,多発),分布(静脈群)を評価した.
【結果】
1.孤立性血栓31例では,部位は片側21例(左側17,右側4),両側10例であった.左側血栓は両側性(50%)より片側性(81%)で高率であった(P<0.05).病期は急性18例,慢性13例であった.2.総下肢数41肢では,単発血栓は38肢93%で,多発血栓が3肢であった.単発血栓の分布は,内側静脈6肢(16%),中央静脈27肢(71%),外側静脈1肢(3%),遠位内側静脈2肢(5%),遠位外側静脈2肢(5%)であった.単発血栓の病期は,急性が19肢50%であり,内側静脈5肢(83%),中央静脈11肢(41%),外側静脈1肢(100%),遠位外側静脈2肢(100%)であった.一方,多発血栓の分布は3肢100%で中央静脈が含まれ,また多発血栓の病期は急性が2肢67%であった.
【考察】
ひらめ筋静脈の孤立性血栓は,右側より左側に多く,両側性より片側性で有意に高率なことから,発生部位により病態が異なる可能性がある.発生形式は90%以上が単発血栓であり,分布としては中央静脈と内側静脈での頻度が高いことから,6静脈群ではこれらの2静脈の検索が重要である.塞栓源としては,中央静脈血栓から膝窩静脈,あるいは外側静脈血栓や遠位外側静脈血栓から腓骨静脈の進展過程が重要と考察される.孤立性血栓の正確な検索や評価には,両側ひらめ筋の6静脈群検索法が必要と考えられる.孤立性血栓の診療では,診断時の血栓評価として,部位,病期,形式,分布と共に,塞栓化リスク(硬度,固定性)を判定し,治療を選択する.診断後の経過観察としては,急性では1年以上(1か月目,3か月目,6か月目,以後6か月毎),慢性では3か月以上(3か月目,6か月目,以後6か月毎)の期間が必要と考えられる.
【結論】
1.ひらめ筋静脈の孤立性血栓は,右側より左側に多く,両側性より片側性で有意に高率であった.2.大部分が単発血栓であり,中央静脈や内側静脈の頻度が高かった.3.ひらめ筋静脈では,両側6静脈群検索法により正確な孤立性血栓の検索や評価が可能となる.