小谷 敦志¹, 久保田 義則², 谷口 京子¹, 河野 ふみえ¹, 前川 清¹, 中江 健市¹, 保田 知生³, 工藤 正俊⁴

Atsushi KOTANI¹, Yoshinori KUBOTA², Kyouko TANIGUCHI¹, Fumie KOUNO¹, Kiyoshi MAEKAWA¹, Kenichi NAKAE¹, Chikao YASUDA³, Masatoshi KUDOH⁴

¹近畿大学医学部附属病院中央臨床検査部, ²国立循環器病センター生理機能検査部, ³近畿大学医学部外科学, ⁴近畿大学医学部臨床検査医学

¹Department of Clinical Laboratory, Kinki University Hospital, ²Department of Physiological function Laboratory, National Cerecral and Cardiovascular Center Research Insitute, ³Department of Surgery, Kinki University, ⁴Clinical examination medicine, Kinki University

キーワード :

【はじめに】
下肢深部静脈血栓症評価における下肢静脈エコーの役割は,侵襲性のある静脈造影検査やCTAなどに比べ,スクリーニンングとして第一に行う検査法として確立された．特に問題になるヒラメ静脈血栓は,下腿の筋肉枝静脈であり,その描出には断層法で詳細な検出が望まれる．多くの下肢静脈エコースクリーニング検査では,重力によって拡張伸展する容量血管である静脈の特性を利用し,下腿部を坐位で検査する手法が用いられている．ただ,坐位をとれない場合は仰臥位や腹臥位の姿勢で検査を行うが,下肢静脈が拡張しないため,DVTの評価においては難渋することがある．臥位での下腿深部静脈器質化血栓の検出感度は高くないとの報告がある1）．
【目的】
超音波検査における仰臥位での下腿深部静脈の評価について,我々は仰臥位にて大腿部をカフ加圧し下腿の観察を行う大腿部カフ加圧法の有用性を報告した1）．今回は深部静脈血栓症診断について検討した．
【対象および方法】
当院においてスクリーニング検査で下肢深部静脈超音波検査の依頼のあった16例（男性3例,女性13例,平均年齢66±22歳）の254静脈（膝窩静脈,腓腹静脈内側枝・外側枝,腓骨静脈,後脛骨静脈,ヒラメ静脈中央枝・内側枝・外側枝）とした．下腿の血管の観察は,1.仰臥位下腿外転法（外転法）,2.仰臥位膝立て法（膝立法）,仰臥位で大腿部にカフを巻き70-80mmHgに加圧したまま施行する,3. 仰臥位下腿外転法（加圧外転法）,4. 仰臥位膝立法（加圧膝立法）,5.坐位（坐位法）のそれぞれにおいて,DVTの有無を観察．坐位によって得られた診断を基準とし,仰臥位によるそれぞれの診断と比較した．装置はTOSHIBA社製aplioXVを使用,使用探触子は中心周波数7.5MHz-8.0MHzリニア型探触子,および,中心周波数6.0MHz-3.75MHzコンベックス型探触子を用いた．
【結果】
坐位にて,DVT（+）と診断したのは6例,DVT（-）は10例であった．DVT（+）は腓骨静脈,ヒラメ静脈の計15静脈に観察された．1-4の各法における検出感度は各々33％,71％,67％,100％．特異度はそれぞれ97％,99％,97％,100％．positive predictive valueはそれぞれ25％,71％,55％,91％．negative predictive valueはそれぞれ,98％,99％,98％,100％であった．
【考察】
false positive症例は外転法および加圧外転法で多かったことより体位的にcompression手技が難しい事が考えられた．false negative症例は外転法で多いことから,坐位のような静脈拡張が得られないため,器質化した血栓を描出できなかったと考えられた．
【結論】
坐位姿勢をとれない場合の下腿深部静脈の観察は,患者の状態に応じてカフ加圧法を行い膝立法により観察することで坐位と同程度の診断精度が得られる．
1）井門浩美,久保田義則ほか．J Jpn Coll Angiol, Vol 47. 2007, S201.
2）小谷敦志,久保田義則ほか： J Jpn Coll Angiol, Vol 48. 2008,S107.