Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 血管
ワークショップ14 静脈エコーで何処まで観るか?:目的別にみた検査法の工夫

(S225)

静脈エコーでどこまで診るか?:目的別にみた検査法の工夫

Practical tips for lower extremity venous ultrasound examination

中川 摩耶1, 西尾 進1, 山田 博胤2, 佐田 政隆2

Maya NAKAGAWA1, Susumu NISHIO1, Hirotsugu YAMADA2, Masataka SATA2

1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学病院循環器内科

1Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital, 2Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital

キーワード :

静脈エコーで診る主な疾患は,深部静脈血栓症(DVT)と表在静脈瘤である.DVTの評価では肺塞栓症の原因となるような血栓を見落とさないこと,表在静脈瘤の評価ではその原因となる病態の評価が重要である.■DVT 深部静脈の描出の注意点として,静脈は動脈と違いバリエーションが多く,複数本認めることがある.2本あるべき静脈の1本のみしか血流が確認できない場合,他方は閉塞の可能性も考える必要がある.また通常,2本のうちのいずれかの開存性が良好であれば還流障害による下腿腫脹などの症状は出現しない.エコー検査のコツ・血栓の中枢端の位置を評価する中枢端が膝窩静脈より中枢側にある場合,あるいは浮遊血栓である場合は塞栓源のリスクが高い・血栓の性状を評価する DVTは血栓形成2週間までの急性期と,血栓形成後2週間から6ヶ月以内の亜急性期,血栓形成後6ヶ月以降の慢性期に大別され,病期が進むと血栓のエコー輝度は上昇し,血管径の縮小する.亜急性期には炎症により血管壁に固定され,浮遊血栓が消失するが,血栓の中枢端のエコー輝度が低く,血管壁に完全に固定されていない場合は塞栓源としてのリスクが高い.また,急性期以降であっても血栓が伸展する場合があるので経過観察が必要である.・肺塞栓合併の有無を評価する急性期に血栓を認めた場合,心エコー検査で肺高血圧の有無を評価することは,肺塞栓症の早期診断に有用である.■表在静脈表在静脈の主な疾患として静脈瘤と表在性血栓性静脈炎がある.静脈瘤の原因として静脈弁の機能不全と不全穿通枝が挙げられる.下腿のミルキングを施行し0.5秒以上の逆流時間を認めれば弁機能不全と診断する.穿通枝の径が4mm以上拡張している場合,不全穿通枝を疑う.カラードプラ法を用いて足部上方をミルキング後,深部から表在に向かう逆行血流を認めれば不全穿通枝を診断する.ストリッピング術や結紮術は伏在静脈の抜去や結紮だけではなく,術後の再発に大きく関与する不全穿通枝を結紮する必要があり,術前の不全穿通枝の評価が重要である.ストリッピング術には伏在静脈の全体を抜去する術式と逆流部位のみを抜去するがあり,後者では逆流範囲の正確な評価が重要である.表在性血栓性静脈炎は,静脈瘤によるうっ血や静脈注射などが原因で血栓が形成される.エコー検査のコツ・検査体位に気をつける.長時間の立位は転倒する可能性が高く,注意が必要である.立位を保持できない場合は,立位が適する鼠径部や膝窩部を優先して行い,下腿は坐位で行うなどの工夫をする.・十分に足を観察する.理学所見をとる場合は可能なかぎり立位で行い,浮腫,色素沈着,皮膚潰瘍,発疹,微小静脈の拡張,静脈瘤形成等を観察する.静脈瘤の局在によって大伏在静脈領域か小伏在静脈領域の推定もできる.・プローブによる過度の圧迫に注意する.表在静脈は体表面に近く,容易に変形するので押さえ過ぎないようにする.・ミルキング手技に注意する.ミルキングによる逆流時間は手技により容易に変化する.筋肉が多く,圧迫しやすい位置を選択し,揉むように圧迫してゆっくり解除すると良好な逆流波形が記録できることがある.・静脈の解剖を理解する.小伏在静脈は必ずしも膝窩静脈と合流するとは限らず,浅大腿静脈や大伏在静脈と合流する場合がある.特に小伏在静脈の対するストリッピング術や結紮術の場合は膝窩静脈との合流部は重要な観察ポイントになる.