英文誌(2004-)
特別企画 血管
シンポジウム11 「機能診断」としての血管エコーを活かす:他の診断法との比較から
(S222)
「機能診断」としての血管エコーを活かす:腎動脈エコーによる慢性腎臓病の診断と評価
Diagnosis and evaluation of chronic kidney disease by renal arterial echography.
阿部 倫明
Michiaki ABE
東北大学病院腎高血圧内分泌科
Division of Nephrology, Endocrinology and Vascular Medicine., Tohoku University Hospital.
キーワード :
腎臓のエコー検査は,水腎症・結石・腫瘍・血栓症・梗塞・動静脈瘻を診断する上で非常に重要な検査である.最近では,腎動脈ドップラエコー法により,腎動脈狭窄症の診断には欠かせない検査法となっている.腎動脈エコー検査の特徴は,ベッドサイドで簡便に行えるだけではなく,腎機能を評価する事が可能である検査手技である.CTアンギオやMRアンギオでは,動脈の血管径や動脈壁の状態を評価できるが,血流の評価は出来ない.エコー検査では血流が評価できるため,腎動脈狭窄の有意狭窄や腎内動脈の血管抵抗(Resistive Index)が評価できる.腎動脈ドップラエコーによる人の腎動脈血流波形は,1975年に初めて報告された[Tohoku J. Exp. Med. 118, 393-394.].Tardus parous効果の概念を取り入れることにより,この腎動脈血流の速度測定から,腎動脈狭窄症の存在を推定することが可能となった.腎内動脈の血流速度測定からは,腎移植後の腎臓機能や,腎萎縮を推定することが可能となった.超音波機器の改良も伴って,近年では,本検査法により慢性腎臓病の残腎機能を推定することが可能であることが報告された.現在,腎動脈エコー検査は,慢性腎臓病から末期腎不全に至るまで,腎臓を把握するための重要な検査方法となっている.本演題では,腎動脈ドップラエコーの方法とその考え方,腎血管性高血圧における診断基準(暫定的な)について総説する.また,いくつかの症例(両側腎動脈狭窄症・頻回再発する線維筋性異形成による腎血管性高血圧症・大動脈周囲炎が合併した腎動脈狭窄症・慢性腎不全患者における腎動脈狭窄症)を提示し,腎動脈エコー検査における臨床上の有用性や必要性を説明するとともに,CTアンギオやMRアンギオなどの検査法と比較検討したい.さらに,Resistive Indexを用いて,慢性腎臓病患者における腎機能評価の現状を報告したい.