山本 哲也¹, 松村 誠², 大竹 章文³, 渡邉 哲夫³, 三村 優子¹, 三原 千博¹, 数野 直美¹, 岡原 千鶴¹

Tetsuya YAMAMOTO¹, Makoto MATUMURA², Akifumi OOTAKE³, Tetsuo WATANABE³, Yuuko MIMURA¹, Chihiro MIHARA¹, Naomi KAZUNO¹, Chizuru OKAHARA¹

¹埼玉医科大学国際医療センター中央検査部, ²埼玉医科大学国際医療センター心臓内科, ³日立アロカメディカル株式会社第一メディカルシステム技術本部 製品開発部 システム1課

¹Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan, ²Cardiology Department, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan, ³System Section 1. Products R&D Dept. Medical Systems Engineering Division 1., Hitachi Aloka Medical,Ltd.

キーワード :

【はじめに】
末梢血管領域における狭窄や閉塞などの形態的評価は,超音波検査やCT検査,MRI,血管造影などいずれも有効である．しかしドプラ法は他の検査法では得られない血行動態に基づいた機能評価が可能である．通常,血流速度の測定にはパルスドプラ法が利用されるが,高速血流の速度計測には連続波ドプラ法が必要となる．連続波ドプラ法はセクタ型探触子の機能の一つとして多用されているが,末梢血管領域で用いた場合,様々な問題を有している．当院では連続波ドプラ法を使用できるリニア型,及びコンベックス型探触子を日立アロカメディカル社と共同開発し,その臨床的有用性について報告した．今回,このモードで測定された最大血流速度を他のモダリティーから得られる情報と比較検討した．
【対象】
血管超音波検査において高速血流が検出された64例．男性44例,女性20例,平均年齢は69歳．高速血流検出部位は69病変であった．
【方法】
リニア型あるいはコンベックス型探触子を用いてパルスドプラ法による最大血流速度2.0m/secを超える高速血流検出部位に対し,角度補正をしない状態でパルスドプラ法（リニアPW,コンベックスPW）と連続波ドプラ法（リニアCW,コンベックスCW）による最大血流速度を測定した．次にセクタ型探触子を用いて同部位を同定した後,連続波ドプラ法（セクタCW）による最大血流速度を測定し,それぞれの最大血流速度を比較した．後日,他の画像診断で同部位が狭窄病変を有しているか確認した．使用装置は日立アロカメディカル社製プロサウンド α7,探触子は4.0-11.0MHzのリニア型と3.0-5.0MHzのコンベックス型,1.5-4.3MHzのセクタ型探触子を使用した．
【各モダリティーとの比較】
1）パルスドプラ法との比較リニアCW,及びコンベックスCWによる最大血流速度は,パルスドプラ法で得られる血流速度よりやや高値を示す傾向があるが,両者間には高い相関性があった．パルスドプラ法で最大血流速度部位の検出が難しい症例や,動静脈瘻などの測定上限を超える高速血流例では極めて利便性が高いと考えられた．また,パルスドプラ法では狭窄血流が検出されず,連続波ドプラ法で狭窄が確認された症例も存在し,日常検査における両者の併用は診断率向上に寄与するものと思われた．2）セクタ型探触子における連続波ドプラ法との比較リニアCW,及びコンベックスCWによる最大血流速度は,セクタ型探触子で得られる最大血流速度より若干低値を示すが,両者間には高い相関性があった．リニアやコンベックス型ではセクタ型に比較し,探触子の大きさ,形状が血流方向に対するビーム入射角度を小さくするのに不利なため,血流速度が若干低値を示したと考えられた．しかし,探触子を持ち替える手間がかからず,分解能がセクタ型探触子より優ることや近距離でも視野が広いなどの利点も多く,検査を短時間で行うためにも有用性が高いと考えられた．3）他の画像診断との比較CTやMRI,血管造影などを超音波検査施行日の近日に施行したのは20例であった．他のモダリティーで軽〜中等度狭窄と診断された症例の最大血流速度の平均値は251±39cm/sec,重症度の最大血流速度の平均値は284±47cm/secであった．超音波検査ではスクリーニングとしての診断的価値は他の画像診断より高い．一方,超音波ビームの入射角度の問題点や腹部や腸骨動脈領域では肥満度や消化管ガスの影響を受けやすく,CTやMRIに比較すると劣る問題もあった．
【結語】
リニア型,及びコンベックス型探触子を用いた連続波ドプラ法での最大血流速度の測定は機能診断として有用であり,他のモダリティーを補助する上でも有効性が高いと考えられる．