Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 循環器
ワークショップ9 心臓再同期療法の効果を心エコー図法で引き出す

(S214)

CRTにおける左室収縮遅延部位と左室ペーシング部位との関係 〜2DSTEによる検討〜

Relation of Radiographic LV Lead Position to the LV Delayed Contraction Segment Assessed by 2D Speckle Tracking Images in the Patients receiving CRT

中島 淑江1, 松村 誠2, 小川 晴美2, 有山 幸紀2, 加藤 律史2, 村松 俊裕2, 松本 万夫2, 西村 重敬2

Yoshie NAKAJIMA1, Makoto MATSUMURA2, Harumi OGAWA2, Miyuki ARIYAMA2, Ritsushi KATO2, Toshihiro MURAMATSU2, Kazuo MATSUMOTO2, Shigeyuki NISHIMURA2

1坂戸中央病院内科, 2埼玉医大国際医療センター心臓内科

1Department of Internal Medicine, Sakado Central Hospital, 2cardiovascular medicine, Saitama Medical University International Medical Center

キーワード :

【背景】
心室再同期療法(CRT)の左室ペーシング部位は,理論的には左室収縮最遅延部位に位置するべきであり,実際には可能な限り右室リードから離れた左室側壁や後側壁に留置されているが,左室収縮遅延部位と左室ペーシング部位との関係についてのデータは少ない.
【目的】
CRTの術前2Dスペックルトラッキングエコー(STE)による左室収縮遅延部位と胸部レントゲン写真上の左室リード位置,右室-左室リード間距離との関係が左室リバースリモデリングに及ぼす影響について検討する.
【方法】
初回CRTを施行した成人患者連続55例(平均66歳,男性73%)を検討した.手術前と術半年後の左室拡張末期容量,左室収縮末期容量を心エコーで計測し,術半年後に左室収縮末期容量が15%以上減少した29例を有効群とした.術前心エコー2D STE法で得られた短軸方向ストレインの心基部と乳頭筋レベル各々6セグメントでの,前駆出期と後収縮期を含んだ収縮期間内における早期収縮部位から収縮遅延部位までのピークストレインの時間差(Td)で心室内非同期を評価した.術後胸部レントゲン(XP)2方向で,左室リード位置を基部,中部,心尖部(正面像),前壁,側壁,後壁(側面像)に分類した.また右室リードと左室リードの先端との距離を測定し,直接距離,水平距離,垂直距離に分類した.また距離は心胸郭比で補正した.
【結果】
右室リードは90%が右室心尖部に留置され,左室リードは93%が冠静脈洞経由で留置された.収縮遅延部位と左室リード位置の一致を認めた34例を一致群とした.左室収縮最遅延部位が側壁であった患者(23人)の96%に一致群を認めた.(p<0.01) 胸部XP正面像中部に左室リードが位置していた患者(22人)の82%に一致群を認めた(p=0.01)が,側面像との関係はなかった(p=0.06).また側面像における右室-左室リード間距離(補正後)は一致群で有意に延長していた.(直接:1.6±0.3 vs. 1.4±0.3cm, p=0.02, 垂直:0.9±0.4 vs. 0.7±0.4cm, p=0.03) しかし,左室リバースリモデリングと一致群との関係はなかった.一致群と心エコー所見について単変量及び多変量解析(多重ロジスティック解析)を行った結果,最遅延部位が側壁であることと,胸部側面像の距離が独立した予測因子であった.(各々p<0.001, p=0.02)依然として,2D STEによる左室内非同期評価は,心基部,乳頭筋レベルのTdが有効群で優位に延長していた.(Tdbase:358±115 vs. 266±149msec, p=0.01, Tdmid:355±94 vs. 198±152msec, p<0.001)有効群と臨床所見,心エコー所見,左室リード位置について単変量及び多変量解析を行った結果,乳頭筋レベルでの心室内非同期のみが独立した予測因子であった.(p<0.001, AUC=0.80)
【結論】
2D STEによる収縮遅延部位を考慮した左室内非同期評価はCRTの有効群予測に有用であった.また,2DSTEで左室収縮遅延部位が側壁を示し,胸部側面像で左室リードの留置部位をできるだけ右室リードから離すことが,左室ペーシング部位と左室収縮遅延部位との一致に関与していたが,左室リバースリモデリングと左室ペーシング部位と左室収縮遅延部位との一致には関係はないことが示唆された.今後も継続した検討が必要であると思われた.