英文誌(2004-)
特別企画 循環器
ワークショップ3 カテーテル治療(ASO,TAVI,BAV,MVclip)と心エコー
(S205)
心疾患のカテーテル治療における三次元経食道心エコー図の価値
Value of 3D transesophageal echocardiography in the era of structural heart disease
渡辺 弘之
Hiroyuki WATANABE
榊原記念病院循環器内科
Department of cardiology, Sakakibara heart institute
キーワード :
カテーテルによる心疾患の治療では,MSに対する Balloon治療 (PTMC) は最も長い歴史を持つ治療手段である.カテーテル治療の特徴は開胸することなく侵襲度を下げて手術と同様の結果が得られることである.これは治療を希望する患者の苦痛を軽減するだけでなく,リスクを軽減したり,対象を拡大する新たな可能性を生み出している.今日ではASDにASOデバイス,ASにTAVR(またはTAVI)が臨床応用に成功し,広く用いられるようになりつつある.日本ではASOデバイスは認可済み,TAVRは治験が進行中である.これらの開胸しない心臓手術では,器質的異常を直視化に見ずに治療する.PTMCのようにBalloonだけを用いた治療では,従来の心血管造影装置だけでも治療が可能である.しかし何らかのデバイス留置が必要な治療では,デバイスと生体との関わりを十分に可視化するために,同時にいくつかの画像診断が必要であり,その代表が心エコー図である.心血管造影は透亮像である.放射線が透けなければデバイスの全体像をリアルタイムに明瞭にとらえることができる.しかし生体組織は放射線が透過してしまうので,心房中隔や大動脈弁を心血管造影で観察することはできず,造影剤を用いて初めて影として形態的異常を知ることが可能になる.一方心エコー図は断層図である.デバイス全体を捉えることは困難だが,複数の適切な断面を捉えることで,心臓組織もデバイスも断層図として直接,造影剤なしで表現することができる.特に経食道心エコー図は,明瞭で精細な画像が最大の特徴であり,デバイス挿入から適切な留置の最終的確認,さらに合併症の診断まで,術中モニターとして必須のツールとなった.さらに近年では二次元表示を超えた三次元表示が開発され,デバイスの全体像の提示が可能になった.その結果,心エコー図でデバイスと生体の関係と局所と全体の関係を適切に,判りやすく認識できるようになった.すなわち,今日のデバイス治療では,放射線画像と心エコー画像,特に三次元経食道心エコー図を適切に組み合わせることで,被爆を軽減しながら,安全な治療を進めることができるようになりつつある.このように,三次元経食道心エコー図は,様々なデバイス治療で重要な一角を占めるようになり,心エコー室の中だけでなく,心カテーテル室やハイブリッド手術室の中に常設されるべき診断機器となりつつある.今後,時間分解能や空間分解能,視野角度などが改良されれば,より広い領域で活用されるようになり,造影剤や被爆を最小限に抑え,さらに侵襲度の治療に貢献できると考えられる.