山田 博胤^{1, 2}

Hirotsugu YAMADA^{1, 2}

¹徳島大学病院循環器内科, ²徳島大学病院超音波センター

¹Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, ²Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital

キーワード :

【“良い技師”とは】
　「優れたソノグラファー」の定義を考えてみよう．米国診断医用超音波学会では,プロフェッショナルなソノグラファーは,「超音波検査とそれに関連した検査によって患者からデータを取得し,そのデータを解析する．所見のサマリーを医師に提示し,患者の診断や治療の補助をする．システマティックな問題解決法を用いて独自の判断により,質の高い診断情報を提供し,有効な患者ケアに貢献する．」とされている．そのようなソノグラファーになるには,1）エコーを撮るテクニック,2）超音波,装置に関する知識,3）解剖,病態,疾患に関する知識,4）患者,医療スタッフとのコミュニケーション能力,を身につけることが肝要である．これらの習得には本人のモチベーションや努力が必須であるが,それを支える環境も大切で,医師の理解とサポートが欠かせない．
【超音波検査士の取得】
　心エコー検査を始めた技師がまず目指すのが超音波検査士であろう．資格がすべてとは思わないが,自分のキャリア形成につながるし,とりあえずの目標としてモチベーションを高めることもできる．検査士の取得に際して求められるのは,検査実績およびその報告書と,超音波の基礎知識（音響工学や超音波診断装置について）,心・血管エコー検査における臨床知識である．検査実績報告書には,検査結果はもちろんであるが,なぜその検査が依頼されたか,検査の結果が治療方針の決定にどう活かされたか,検査の結果が他のモダリティーの検査結果やカテーテル検査あるいは手術所見と比較してどうであったか,が分かることが望ましい．しかし,それを考察して報告書に記載するためには,医師からの検査依頼書に十分な情報が提供され,かつ,検査の目的が明確にされていること,検査後に医師からソノグラファーにフィードバックが行われる必要がある．
【さらなる高みを目指すために】
　超音波検査士を取得すれば一人前のソノグラファーになるかというと,そうでないことが多い．エコー検査を任せてもらえるようになるには,まだまだ時間がかかるだろう．ソノグラファーとしての実力を身につけるには,症例数をこなして臨床経験を積むことが大事であるが,講習会や学会に参加して,擬似的に症例を経験し,エコーだけでなく他の検査,疾患の治療法など幅広い知識を身につけることが必要である．さらに,学会で発表したり,研究に参加したりすれば,ソノグラファーとしての実力が加速度的に向上するだろう．そのためには,周りの医師達がそれを理解し,臨床現場がどんなに忙しくてもソノグラファーが講習会や学会への出張する機会を作り,可能なら金銭的なサポートを行うことが求められる．また,医師がソノグラファーを巻き込んだ臨床研究を行い,症例報告や研究発表をサポートしつつ,お互いに切磋琢磨するというスタンスが大切だと思う．
【最後に】
　やる気があれば一人で勉強しても,医師から信頼され検査を任せられるプロフェッショナル・ソノグラファーになれないことはないだろう．しかし,そんな気概のある若者は少ない．普通の若者がプロのソノグラファーになれるよう,モチベーションを持たせ続けられる環境を,医師が作っていく必要があるのではないか．現代は,チーム医療の時代といわれる．医師は向上心のあるコメディカルを羽ばたかせる責務を担っている．