Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 循環器
パネルディスカッション2 循環器疾患における携帯型超音波

(S193)

急性呼吸困難症例の迅速診断における携帯型超音波検査の有用性

A rapid evaluation using a hand-carried ultrasound device in the etiologic diagnosis of acute dyspnea in the emergent setting

梶本 克也

Katsuya KAJIMOTO

社会福祉法人 浅草寺病院循環器内科

Division of Cardiology, Sensoji Hospital

キーワード :

【目的】
急速に生じた呼吸困難は救急外来で最も多い胸部症状の一つであり,重篤なことが多く緊急病態と捉えて迅速かつ的確に呼吸困難を起こす基礎疾患・病態を鑑別し,さらに緊急度に応じた初期治療を選択して行う必要がある.また,急性呼吸困難の原因として急性心不全症候群を迅速に鑑別診断することはとても重要である.しかし,救急外来での急性呼吸困難に対する治療戦略については様々な報告があるが,迅速な鑑別診断についてはいまだに十分に評価されていない.このため,初期治療のみならず初期診断の迅速かつ的確なアルゴリズムを検討すべきである.今回,我々は急性呼吸困難症例の迅速鑑別診断における携帯型超音波検査の有用性を検討した.
【対象と方法】
対象は急性呼吸困難を主訴に救急外来を受診された連続55症例である.外来にてまず携帯型超音波検査により肺,心臓,そして下大静脈の統合評価を速やかに行い,心原性呼吸困難(急性心不全症候群)と非心原性呼吸困難に鑑別した(図).さらに,確定診断のために胸部X線,採血(生化学,血算,B-type natriuretic peptide),12誘導心電図を携帯型超音波検査の直後に施行した.また,必要に応じて胸部CTにより肺野および縦隔の評価を行った.なお,肺エコーは正常(A-lines)または異常サイン(B-lines)を片側または両側に認めるか否かで鑑別診断を行った.
【結果】
急性呼吸困難を伴う連続55症例のうち44症例にて肺エコーで両肺野異常所見を認めた.そして,心エコーおよび下大静脈エコーにより心原性呼吸困難と迅速診断をしたのは44症例中37症例であった.最終的に他の検査により心原性呼吸困難(急性心不全症候群)と確定診断されたのが35症例(感度:97%,特異度:95%)であった.
【結論】
急性呼吸困難症例に対して,携帯型超音波検査による肺,心臓,そして下大静脈の迅速な統合評価を行うことにより心原性(急性心不全症候群)と非心原性呼吸困難を迅速にかつ的確に鑑別診断することが可能であった.急性心不全症候群の短期および長期予後の改善のためには,超急性期においてバイタルサイン,理学的所見,そして携帯型超音波検査をいかに活用して速やかに的確な診断ができるか,そしていかに速やかに適切な治療方針を決めることができるかが今後の重要な課題であると考える.