福田 祥大

Shota FUKUDA

大阪掖済会病院循環器内科

Department of Medicine, Osaka Ekisaikai Hospital

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近年,電子機器の進歩によりエコー機器本体がコンパクト化し,小型かつ軽量で持ち運びに便利なポケット型携帯エコー装置が登場した．ポケットエコーはその名のとおり,起動性に優れ,どこでもすぐに検査ができる．2009年カラードプラ機能を有するGE社製VSCANが発売された．しかし,携帯性を優先させた分,画面は小さく,性能は制限されている．よって,その臨床的な有用性を検討する必要がある．我々は,ポケットエコーによる弁膜症,特に僧帽弁逆流（MR）と三尖弁逆流（TR）の診断が可能か否かを検討した．対象は標準エコーが施行された連続186例（平均66±19歳,男性107例）である．標準エコーに引き続いてポケットエコーを施行した．121例は十分に経験を積んだ検者が,残り65例は経験の少ない検者がポケットエコーを行った．心尖部四腔像でカラードプラ画像を取得し,MRジェット面積と左房面積との比（％MR）,TRジェット面積と右房面積の比（％TR）を求め,標準エコーの結果と比較検討した．結果,全例でポケットエコーが施行可能であった．MRジェット面積,左房面積,％MR,TRジェット面積,右房面積,％TRは標準エコーとポケットエコーで良好に相関した（r=0.89 to 0.96, p＜0.001）．中等度異常（＞20％）の診断はMRで感度・特異度とも96％,TRで感度94％,特異度96％であった．また,弁逆流の原因は,多くの症例が機能性逆流であったが,標準エコーの所見とポケットエコーの結果はすべて一致した．検査経験の不十分な検者においては標準エコーとポケットエコーの結果の一致は低下する傾向であり（r=0.85 to 0.94, p＜0.001）,MR診断の感度は85％,特異度は92％,TR診断の感度95％,特異度80％であった．本検討によって,カラードプラ機能を有するポケットエコーは十分にMRとTRが診断できるが判明した．しかし,ポケットエコーの使用に際して十分なエコー経験が必要であることも示唆された．実際の臨床の現場,特に循環器救急では,短時間かつ限られたアプローチから迅速に病態や疾患を診断することが重要である．次の課題は,ポケットエコーが様々な疾患の治療方針の決定に有用であるか否かを明らかに,その経済的有用性を検討することである．現在,我々は病院規模の違う複数施設と共同してこれらの課題の究明に取り組んでデータを蓄積している．この点に関しても議論していきたい．