Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 循環器
シンポジウム8 弁膜症の診断と治療

(S188)

大動脈弁狭窄評価の問題点とその対策:特に圧力回復現象について

Limitation and solution for the assessment of aortic stenosis: Impact of pressure recovery

大倉 宏之

Hiroyuki OKURA

川崎医科大学循環器内科

Cardiology, Kawasaki Medical School

キーワード :

大動脈弁狭窄症(AS)の重症度評価には心エコー図による最高流速,平均圧較差,弁口面積が用いられている.ガイドラインでは最高流速4.0m/sec以上,平均圧較差40mmHg以上,弁口面積1.0cm2(弁口面積係数 0.6 cm2/m2)以下,が重症ASの基準とされている.ASの標準的外科治療は大動脈弁置換術であり,重症例では自覚症状や心機能などを考慮して手術適応を判断することになる.しかしながら,ガイドライン通りに診断をすすめていっても重症度の診断に迷うことがある.たとえば,流速や圧較差による重症度と弁口面積が一致しない場合があげられる.それぞれの計測に問題がなければ,以下のように考える.圧較差が大きいのに,弁口面積が小さくない場合には,高心拍出状態や大動脈弁逆流の合併等の流量が増えている状態を疑う.圧較差が小さいにもかかわらず弁口面積が小さい場合は,low flow, low gradient ASが考えられる.左室収縮能が低下した結果,大動脈弁を通過する流量が低下するため,圧較差が小さくなる状態である.また,弁口面積が1.0 p2以下でも,本当に重症ASである場合と実際は中等度ASなのに一見重症ASに見えているだけの例,pseudo severe ASの2通りの可能性がある.両者の鑑別にはドブタミン負荷心エコー法が有用である.重症度評価がすべてボーダーライン上にある例や心エコー図による重症度がカテーテルの結果と異なる場合にも,手術適応の判断に迷う.連続の式はGorlinの式と比較すると,弁口面積を過小評価(重症度を過大評価)する傾向にある.その理由の一つが,圧力回復現象である.圧力回復現象の程度によって,ドプラ法による圧較差と実際の(カテーテルによる)圧較差の間に乖離が生じる.そこで,心エコー図により圧力回復現象を補正して弁口面積を評価するための指標としてELCoが提唱されている.特に弁口面積が0.75〜1.0cm2の間は,「グレイゾーン」であるためELCoを用いて慎重に重症度を評価,判定すべきである.