Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 循環器
シンポジウム2 心不全の診断と治療

(S184)

心エコー・ドプラ法による左房-左室-動脈連関異常の早期検出とARBによる修復の評価

Early detection of abnormal left atrial-left ventricular-arterial coupling and the reparative effects of telmisartan in preclinical patients

三好 宏和, 大石 佳史, 水口 幸生, 井内 新, 大木 崇

Hirokazu MIYOSHI, Yoshifumi OISHI, Yukio MIZUGUCHI, Arata IUCHI, Takashi OKI

独立行政法人国立病院機構東徳島医療センター循環器内科

Cardiovascular Section, Higashi Tokushima Medical Center, National Hospital Organization

キーワード :

【目的】
拡張期心不全(DHF)は高齢者,高血圧,メタボリック症候群に高頻度で出現するとされている.心エコー・ドプラ法,特に2D speckle tracking (2DST)法を用い,心血管危険因子を有し,左室駆出率≧50%の患者における左室機能不全を早期に検出し,さらにARB(telmisartan)投与によりDHFへの進展を阻止することである.
【対象・方法】
心血管危険因子(喫煙歴,肥満,高血圧,脂質異常症,糖尿病)を有するpreclinical 100例を対象とし,内未治療高血圧症35例はtelmisartan(20-40mg/日)を1年間投与した.2DST法を用いて左房および左室心筋のdeformationを検討し,頸動脈Mモードエコー法からstiffness β〔ln(SBP/DBP)/[(Ds-Dd)/Dd]〕(SBP;収縮期血圧,DBP;拡張期血圧,Ds;総頸動脈収縮末期径,Dd;総頸動脈拡張末期径)を算出した.
【結果】
1)僧帽弁口血流速波形(TMF)の拡張早期波高(E)と心房収縮期波高(A)の比(E/A)≧1の例においては,左室の収縮はまず最初に長軸方向の短縮が低下するものの,円周方向の短縮の代償的増大により重心方向の壁厚増加は維持される.左室の求心性肥大に伴いE/A<1になると,左室長軸方向の捻れの増大により代償されるものの,円周方向の代償的短縮に限界をきたし,重心方向の壁厚維持に影響を及ぼすようになる(駆出率は少なくとも50%以上に維持される).2)左室の弛緩も最初に拡張早期における長軸方向,次いで円周方向の伸展が低下するものの,E/A<1の例においては心房収縮期における3方向の伸展増大により代償される.3)E/A>1の例においては,頸動脈stiffness増大の規定因子は長軸方向における左房および左室心筋の各々収縮期および拡張早期のstrain rateの低下,すなわち弛緩異常である.4)telmisartanの1年間投与により,収縮期および拡張早期における左室壁3方向のstrain rateの改善,左室捻れの減少,求心性肥大の退縮,および頸動脈stiffnessの有意な低下がみられる.
【結論】
左室機能不全は左室のみでなく,左房-左室-動脈連関の異常として捉えるべきである.2DST法は,この連関の早期異常の診断およびARBの早期介入による修復効果の評価に有用であり,DHFの発症頻度を減少させるための重要なtoolになることが期待される.