Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 基礎
ワークショップ10 超音波医療における安全性に関する基礎知識

(S178)

超音波の安全性に関する規格の動向

The latest trend about safety standard for medical ultrasound

内藤 みわ

Miwa NAITO

日立アロカメディカル株式会社第一メディカルシステム技術本部

Medical Systems Engineering Division 1, Hitachi Aloka Medical, Ltd.

キーワード :

【はじめに】
 医用超音波は,診断から治療まで広範囲にわたり応用されている.それに伴い医用超音波の安全性に関する規格も整備されつつある.今回はIEC規格がどのように作成されるかを説明し,日本国内委員会がどのように関わってきたかについて紹介する.また,2007年発行の超音波診断装置安全性個別規格IEC60601-2-37第2版(今後2-37第2版)について解説し,今後の改定内容や動向について差し支えない範囲で簡単に紹介したい.
【IEC規格について】
 IECでは医用機器の安全性規格は,技術委員会TC62で作成され,医用機器安全性通則IEC 60601-1がベースとなって各々の医用機器に対応した個別規格が作成される.医用超音波の応用は広範囲に及ぶため,診断用超音波・物理療法超音波・強力集束治療用超音波(HITU)など用途別に個別規格が用意されている.一方超音波の測定や性能規格は,TC87で作成される.超音波の安全性を評価するためのパラメータとして診断用の場合はサーマルインデックスTI・メカニカルインデックスMIが考案された.物理療法超音波やHITUも各々安全性評価パラメータが考案されているが,いずれも超音波パワーや超音波音圧・強度などの物理的測定値から導かれる.したがって個別安全性規格と同様,TC87によるこれら超音波音場の測定法規格は重要である.
【日本国内委員会の活動】
 日本国内委員会は規格作成の国際会議において積極的に意見や実験データを出して審議に参加,貢献してきた.これらの実例をいくつか紹介する.
【2-37第2版】
 2005年に発行された医用機器安全性通則IEC60601-1第3版(今後通則第3版)は,リスクマネジメントISO14971の考えを全面的に取り入れている.これは製造業者が自社製品のリスクマネジメント活動を行い,リスク低減を実施し,結果として許容できない残留リスクが無い状態にしておくことが求められる.通則第3版の改定に対応した2-37第2版は,機器の用途別音響出力上限をリスクマネジメントに基づいて製造業者が決めて制限することを要求している.また同時に音響出力指標であるサーマルインデックス(TI)及びメカニカルインデックス(MI)を装置画面上に表示する必要がある.
【今後の動向】
 2010年にTI/MI決定法規格IEC62359第2版が発行された.これによりTIの算出方法が若干変更された.2-37第2版はこの規格を参照しているので,取説に添付する音響出力表が改訂され,1〜2年後にアメンドメントが発行される予定である.また,組織の硬さイメージングに用いられる非常に長時間持続するパルスで不定期な送信波の安全性評価として,「時間窓平均強度」を導入する動きがある.更に超音波照射のリスクについてのガイダンス文書も検討されている.これらの超音波の安全性に関わる規格の動向を継続して注目し,積極的に規格作成に関わっていく必要がある.
【参考文献】
[1]IEC 60601-1 Ed.3: 2005
[2]IEC 60601-2-37 Ed.2: 2007
[3]IEC 62359 Ed.2: 2010