Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 基礎
シンポジウム5 バブルを使った診断と治療

(S172)

新規バブルリポソームを利用した薬物・核酸デリバリーシステムの応用開発

Development of Drug and Gene delivery system by Novel Bubble liposomes and Ultrasound exposure

根岸 洋一1, 髙橋 葉子1, 小俣 大樹1, 濱野 展人1, 鈴木 亮2, 丸山 一雄2, 新槇 幸彦1

Yoichi NEGISHI1, Yoko TAKAHASHI1, Daiki OMATA1, Nobuhito HAMANO1, Ryo SUZUKI2, Kazuo MARUYAMA2, Yukihiko ARAMAKI1

1東京薬科大学薬学部薬物送達学教室, 2帝京大学薬学部生物薬剤学教室

1Department of Drug Delivery and Molecular Biopharmaceutics, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 2Department of Biopharmaceutics, Teikyo University

キーワード :

【目的】
これまでに我々は,既存のマイクロバブルの粒子径が大きいことや標的指向性の欠如などの問題点を解決すべく,血中安定性に優れ,アンテナ分子を付与することで標的指向性を高めることができるポリエチレングリコール修飾リポソーム(PEG-リポソーム)に超音波造影ガスを封入したリポソーム(バブルリポソーム)を作製し,それを利用した超音波照射併用による効率的核酸デリバリーシステムの応用研究を進めてきた.すでに本システムの利用により,様々な培養細胞や局所組織への核酸デリバリーが可能であることを報告している.しかしながら,全身投与による核酸の目的臓器や組織への効率的デリバリーを達成するためには,投与した核酸とバブルリポソームとの体内挙動を一致させ,さらには核酸の排泄および生体内酵素による分解から回避させる必要がある.最近我々は,これらの課題解決に向けて,正電荷脂質を含有させた新規バブルリポソームの開発している.このバブルの表面に負電荷を持つ核酸を搭載させ,これを静脈内投与後に体外から超音波照射を行うことで,挙動の一致による安定的核酸導入が可能であることを明らかとしている.一方で,バブルリポソームへの超音波照射により生じるキャビテーション誘導を利用することで,細胞内に取り込まれた分子標的型DDSキャリアーの細胞内動態にも影響を与え,内封している薬物や核酸の細胞内デリバリー効率を向上させることも明らかとしている.本シンポジウムでは,上述した新規な核酸搭載型バブルリポソームについて,さらには分子標的型DDSキャリアーへのバブルリポソームと超音波照射併用による薬物・核酸デリバリーシステムの有用性について報告する.
【方法】
①正電荷脂質を用いてPEG-リポソームを調製し,さらに超音波造影ガスを内封し,負電荷をもつプラスミドDNAを表面に搭載させた新規バブルリポソームを調製した.細胞に調製したバブルリポソームを添加後,超音波照射し,その後の遺伝子導入効率を評価した.さらに,下肢虚血モデルマウスへの全身投与による適用を試みた.②バブルリポソームへの超音波照射により生じるキャビテーション誘導が,分子標的型リDDSキャリアーの機能に影響を与えるかを調製した種々の分子標的型リDDSキャリアー(プラスミドDNAまたは,抗がん剤内封)をがん細胞内にエンドサイトーシスを介して取り込ませ,その後にバブルリポソーム(中性脂質含有)と超音波照射の併用を行った.
【結果・考察】
①正電荷脂質を含有させた新規バブルリポソームを用いた培養細胞への遺伝子導入実験において,効率的導入が可能であった.さらに疾患モデルへの適用実験では,血流改善および血管新生促進因子の遺伝子発現上昇が認められ,プラスミドDNA搭載型バブルリポソームのin vivoにおける有用性が示された.②バブルリポソームと超音波照射の併用は,エンドサイトーシスによって,取り込まれた分子標的型DDSキャリアーの細胞内動態に影響を与え,内封している薬物や遺伝子のキャリアーからの放出効率が促進することが示唆された. 以上のことから,バブルリポソームと超音波技術の融合は,既存,あるいは新規の薬物・核酸デリバリーシステムの機能性向上を可能とする重要な技術となるものと期待される.