Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
ワークショップ13 ボリュームデータとしての超音波診断と治療ナビゲーション

(S165)

肝細胞癌診療におけるRVS(Real-time Virtual Sonography)の有用性

The usefulness of Real-time Virtual Sonography for hepatocellular carcinoma

坂本 梓1, 木村 達1, 谷口 敏勝2, 恵荘 裕嗣3, 齋藤 澄夫1, 西川 浩樹1, 喜多 竜一1, 岡部 純弘1, 大崎 往夫1

Azusa SAKAMOTO1, Toru KIMURA1, Tosikatsu TANIGUCHI2, Yuji ESO3, Sumio SAITO1, Hiroki NISHIKAWA1, Ryuichi KITA1, Sumihiro OKABE1, Yukio OSAKI1

1大阪赤十字病院消化器科, 2大阪赤十字病院超音波検査室, 3京都大学大学院医学研究科消化器内科学

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Osaka Red Cross Hospital, 2Division of Ultrasound, Osaka Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology and Hepatology, Kyoto University

キーワード :

【背景】
2003年より当院で使用を開始したReal-time Virtual Sonography(以下RVS)は改良が重ねられ,2009年6月に登場した超音波診断装置HIVISION Preirus(HITACHIメディコ社製)では,RVSに新たにマーキング機能を搭載され,2011年6月からはリアルタイムにadjustを行うことが可能となった.また近年,Sonazoid造影超音波,Gd-EOB-DTPA造影MRIが肝癌診療の現場に登場し,Sonazoid造影併用下RVSや,リファレンス画像としてEOB-MRI肝細胞相を用いるEOB-RVS等,RVSの使用法も多岐にわたるようになった.昨今の肝癌診療の変化に合わせて,進化したRVSの肝癌診療における有用性を当院での経験をもとに報告する.
【対象】
2008年1月から2011年11月までに当院で施行されたRFA1443例中,治療支援としてRVSを使用した309例,および診断支援としてEOB-RVSを施行した34例.
【目的】
①:RVSの使用理由を検討し,有用性の高い使用方法を明確にする.②RVSを治療支援として使用した症例における治療成績を検討し,その有効性を明らかにする.③EOB-MRI肝細胞相をリファレンスとしたRVS(EOB-RVS)の肝癌診断・治療支援における有用性を明確にする.
【方法と結果】
①肝癌治療支援としてRVSを使用したその理由を検討したところ,再治療時の未凝固域の特定が49%,B-modeで視認できなかったためが21%,局所再発治療時の治療標的部位の特定が18%,B-modeで視認できるが位置の再確認のためが12%であった.②マーキング機能搭載以降である2009年6〜12月に施行したRVS下RFA30例と,マーキング機能搭載以前である2009年1〜5月における同様症例26例の治療成績をR判定(肝臓2008;49:192-199)に基づき比較した.R2以上の凝固域が得られた割合は,マーキング機能搭載以前:以降=62%:80%と,マーキング機能搭載以降において治療成績の向上がみられた.③EOB-MRI肝細胞相で周囲肝より低信号を呈する非多血性肝細胞性結節49結節(34症例)を対象とし,EOB-RVSの結節検出能を検討した.ルーチンのB-mode USでの結節検出率は59.2 %(29/49)結節)に比し,EOB-RVSでは 85.7%(42/49結節)と向上した.
【考察】
RVS下でRFAを施行する症例は,再治療時の未凝固域の特定や,局所再発の標的部位特定など,治療困難例に対し使用する頻度が高い結果であった.そのため,以前のRVS下RFAの治療成績は支援画像を使用しなかった症例に比し,治療成績が劣る傾向がみられた.しかし近年,Sonazoid造影の併用やマーキング機能の搭載により,治療標的部位の特定が困難な局所再発部位や,未凝固領域の特定が容易となり,RVS下RFAの治療成績に向上がみられた.RVS下RFAは治療困難例を対象としているにも関わらず,支援画像を使用しない症例より,良好な治療成績が得られるようになった.EOB-MRI肝細胞相で低信号を呈する非多血性結節は,通常異型性結節から高分化型肝細胞癌に至る境界病変とされ,Sonazoid造影超音波のKupffer相ではこういった結節の検出率が低いことは既報の通りである.しかし,EOB-RVSを用いることにより,非多血性結節の多くをUSにて同定することができ,その後の生検やRFAが可能となった.EOB-RVSは非多血肝細胞性結節に対しきわめて強力な診断・治療支援画像といえる.
【結語】
RVSは肝癌の診断・治療支援として極めて有用なmodalityである.