Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
ワークショップ13 ボリュームデータとしての超音波診断と治療ナビゲーション

(S163)

胃静脈瘤における超音波volume dataの応用:非侵襲的な定量的静脈瘤診断法の提案

Three dimensional quantitative analysis of color Doppler images for gastric varices

亀崎 秀宏1, 丸山 紀史1, 近藤 孝行1, 関本 匡1, 嶋田 太郎1, 高橋 正憲1, 横須賀 收1, 嶺 喜隆2

Hidehiro KAMEZAKI1, Hitoshi MARUYAMA1, Takayuki KONDO1, Tadashi SEKIMOTO1, Taro SHIMADA1, Masanori TAKAHASHI1, Osamu YOKOSUKA1, Yoshitaka MINE2

1千葉大学医学部附属病院消化器内科, 2東芝メディカルシステムズ株式会社超音波事業部超音波開発部

1Department of Medicine and Clinical Oncology, Chiba University, Graduate School of Medicine, 2Division of ultrasound development, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【目的】
胃静脈瘤は門脈圧亢進症における主要な合併症の一つで,通常,内視鏡によって診断される.しかし本症は血行異常であることから,血流表示に基づいた映像法もその診断に有用であることが予想される.本研究(IRB承認)では,体外走査超音波によるvolume dataを使用して胃静脈瘤の映像化を試み,新たな定量的胃静脈瘤診断法を提案した.
【方法】
APLIO-XG(東芝),二種の3D専用プローブ(375MV, convex; 382MV, microconvex)を使用した.カラーモード(走査角45度)で,アーチファクトが目立たない程度での高い速度レンジ,ゲインを設定した.Volume dataの断面上で,カラー表示部を選択的にトレースし,その自動積算値を血流部容積と定義した.1.基礎的検討:水槽内に内径12mmのチューブを静置し内腔に水を流した.流速については,過去の報告における胃静脈瘤の流入・流出路の流速を参考に,10,15,20cm/sの3速度を選択した.この仮想血流をチューブとの角度を約35度として固定したプローブにより5回撮影し,3D像と実計測による容積の差を検討した.2.臨床例での検討:胃底部静脈瘤39例(F1 18,F2 14,F3 7)を対象とした.3Dプローブを使用し,左側腹部斜走査で脾を介して胃壁ならびに静脈瘤を描出し,呼吸停止下で撮像した(2名の術者,各3回).本検討では,volume data上でB-modeからみた胃壁を同定し,それより胃内腔側に突出した血流表示部分を選択的にトレースして,静脈瘤容積を算出した.
【成績】
1.基礎的検討:3D像で計測された容積の実容積に対する誤差は,375MVでは+5.9〜21.9%(14.2±4.3),382MVでは+6.2〜28.0%(14.9±5.8)で,プローブの差や流速の違いでの有意差を認めなかった.このように,3D像に基づくvolume dataは,計測値の分散や速度依存が少なく血流表示部の容積測定において信頼できることが示された.2.臨床的検討(1)2種のプローブ間での静脈瘤描出能の検討:今回使用した2種のプローブは,形状が大きく異なるため,生体での映像取得において差が生じる可能性がある.そこでまず両プローブで得られたvolume dataを比較し,静脈瘤の描出能差を検討した.対象例における静脈瘤の最浅部は体表から5〜13cm,最深部は7〜14cmであり,10cm以深に存在する静脈瘤17例における静脈瘤の描出能は両者同等であった(375MV:80.4%,382MV:70.6%).一方,3D超音波における最大弧の画像,すなわち一連の扇状走査における最深部像の取得率については,375MV(57.3%)に比べ382MV(66.9%,p=0.0012)が有意に優れていた.これは一部の例において,前者における大口径形状が,狭肋間隙からの広角扇状のビーム入射を困難にしたものと考えられた.そこで,以後の検討については,382MVを使用して行った.(2)超音波所見と内視鏡像の対比:3D超音波では,静脈瘤は82.1%(32/39)において描出された.静脈瘤が検出されなかった7例中5例はF1で,他の2例(F3)はBMI 27.3,30.0と超音波検査に不利な体型であった.静脈瘤程度との関連では,F1,F2,F3での静脈瘤容積(ml)はそれぞれ,0.82±0.91,6.92±4.17,10.14±7.34であり,F1に比べ,F2(p=0.0010),F3(p=0.0003)で有意に高値であった.静脈瘤容積の術者内変動はICC(1, 3)=0.983(0.968〜0.992),術者間変動はICC(3, 2)=0.988(0.975〜0.994)と良好であった.一般に,F2以上の静脈瘤は治療対象となることが多いことから,本法は胃静脈瘤における治療適応の決定にも役立つものと思われた.
【結論】
3Dカラーvolume dataは,血管病変の容積測定法として応用可能であり,胃静脈瘤に対する非侵襲的な診療支援画像診断として有用である.