Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
ワークショップ4 超音波治療機(HIFU,FUS)の現状と展望−基礎と臨床−

(S160)

婦人科疾患に対するMRgFUSの臨床応用

Clinical studies for myomas and adenomyosis with MRgFUS

福西 秀信, 舟木 馨, 髙山 智子

Hidenobu FUKUNISHI, Kaoru FUNAKI, Tomoko TAKAYAMA

新須磨病院婦人科

Gynecology, Shinsuma General Hospital

キーワード :

集束超音波治療(FUS)は多数の超音波を臓器内に集束させ,焦点領域を60-90℃に加熱し,組織を凝固・壊死させる治療法であり,治療前の腫瘍の位置確認や治療中の超音波通過経路,温度上昇の確認など全ての工程をMRI画像上から行うのがMRガイド下集束超音波治療法(MRgFUS)である.目的:症状を伴う子宮筋腫や子宮腺筋症の治療に対する本法の有用性と安全性の検討.方法:子宮筋腫および子宮腺筋症に対するMRgFUS治療は当院倫理委員会で承認を受け,治療に際しては全員に書面で承諾を得た.本治療のためにExAblate2000を使用した.治療用テーブル上で腹臥位とし,腹壁を通して腫瘍の超音波治療を行う.ジアゼパム内服とペンタゾシン側管静注で意識下での鎮痛を図り,その他の麻酔は行わない.コンピュター指示に従って領域内を治療する.治療終了後MRI造影剤を使用し造影剤非灌流領域を調べ,焼灼領域率NPR(造影剤非灌流領域体積/治療対象腫瘍体積)を求めた.自覚症状の推移をSpiesの問診表SSSから集計し数値化した.この数値は低下するほど良好な改善率を示す.この他に満足度のアンケート用紙の提出を3.6.12.24ヶ月間にわたり求めた.結果:治療前のMRI-T2画像で子宮筋腫が腹直筋より高信号を示すものはNPRが低値で,治療後のフォロアップに際しても症状再発例が多かったので,治療適応から除外した.治療後の筋腫体積の推移は6か月から12か月にわたり平均30%から40%へと縮小が見られた.自覚症状は3ヶ月から既に改善が見られ,24ヶ月まで15ポイント程度の低下が持続している(p<0.001).満足度調査では約85%の人が満足と述べている.子宮腺筋症についても同様に治療を行った.腺筋症は子宮筋層内の境界が不明瞭なためNPRは求められないが,比較的広い範囲まで焼灼できるものもあり,効果も期待できたが,治療1年目ごろから症状の再燃が見られるものが多かった.いずれも治療はその日のうちに完結し退院された.有害事象としては皮膚表面の熱感,月経様疼痛,背部痛,血尿,性器出血,嘔吐などが見られたが,腸管損傷や頑固な坐骨神経痛は経験していない.結論:子宮筋腫に関しては長期にわたり自覚症状の改善や満足度も高く,有望な治療と思われた.子宮腺筋症では症状が1年ごろから再燃するものが多く,今後の検討が必要と思われた.働き盛りの年齢層に好発するこれらの疾患に対する低侵襲性治療の更なる発展が望まれる.