Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
ワークショップ4 超音波治療機(HIFU,FUS)の現状と展望−基礎と臨床−

(S158)

HIFU治療の課題とその取組みについて

Development of HIFU Therapy System -Healthcare global trends and strategies-

佐々木 明

Akira SASAKI

東京大学機械工学専攻

Department of Mechanical Engineering, The University of Tokyo

キーワード :

HIFU治療は患者に優しい治療である.エネルギーベースの局所治療であることから,患者への負担軽減,コスト面,治療日数短縮の点からも優れた治療法である.特に日本で研究が先行しているHIFU低侵襲治療手法は,21世紀の治療として世界的に普及する可能性が大である.HIFUの実用化研究は90年代から本格的に行われ,21世紀になりMRIガイド下でのHIFU,USガイド下でのHIFUが次々とFDA,国内薬事認可を得て上市された.現在InSightec社やFocus Surgery社に限られてはいるが,Philips等の総合医療機器メーカーが参入を計画している.現在,これ等機器の治療適用範囲は,子宮筋腫,前立腺肥大の治療に限定されているものの,先進的な医療機関では悪性腫瘍治療への挑戦が続けられ,頭蓋内腫瘍,肝がん,膵がん,前立腺がん,骨転移がんや変形性脊髄症の疼痛緩和,乳がん等へと,その適応範囲が確実に拡大して行くものと予想される.問題は,これらの製品が何れも海外製であり,日本企業は12年以上出遅れた状態にあることだ.理由は,HIFU治療機器のリスク評価対応,市場性にあると考える.リスクに対しては,安全性,再現性,治療時間,等の課題解決に向けての研究が進み,市場性に対しては,臨床治験の壁を超えるためのRegulatory Science (RS)規範の作成,USガイドによる価格対応など幾つかの施策を検討している.産学医が共同し,これ等の課題解決しつつ企業化を図らないと,HIFU治療は100%輸入に依存することになる.課題解決に向けた取り組みの例として ①価格的課題:MRIガイドからUSガイドに展開することであり,そのための温度測定,3次元表示に優れたMRIガイドに代わる超音波ガイドについて,何が揃えば汎用HIFU治療器として付加価値が創出できるかを検討している.②治験:RSに沿った治験により期間短縮で治験の期間短縮と費用の圧縮を考える ③安全性の確保:HIFU治療は全面的に画像モニタリングに頼る治療である.そのため治療前の対象部位の確認,治療中のリアルタイム・モニタリング,治療後の焼灼部位評価まで全て画像による確認が必要となる.確実な脱気,皮膚火傷の防止策などの検討も必要である.この様な一連の対策によって一周遅れの挽回策は可能なのか,課題に対する対策は可能なのか,現在どの様なことが考えられているかを整理分類して報告する.