Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション6 超音波専門医および検査士制度における領域の見直し:消化器領域を腹部領域とすることを議論する

(S156)

追加発言(指導検査士制度委員会)

The idea of revising the current examination: Discussion regarding “abdominal ultrasound”, which will replace current “Gastrointestinal ultrasound”.

森 秀明

Hideaki MORI

杏林大学医学部第三内科

The Third Department of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

 本邦における超音波検査に携わる医師に対する認定制度としては日本超音波医学会認定専門医制度があり,総合,循環器,消化器,腎・泌尿器,産婦人科,乳腺・甲状腺,眼科,脳神経,整形外科,胸部の10領域に分けて認定している.一方,技師に対する認定制度としては,日本超音波医学会認定検査士制度と心エコー図学会認定専門技師制度が行われている.日本超音波医学会認定検査士制度の領域は体表臓器,循環器,消化器,泌尿器,産婦人科,健診,血管の7領域からなっている.また心エコー図学会認定専門技師制度は日本超音波医学会認定検査士制度の循環器または血管領域を取得した技師に対する上級の認定制度として位置付けられている.
 本セッションのテーマである「超音波専門医および検査士制度における領域の見直し:消化器領域を腹部領域とすることを議論する」に関しては専門医制度と検査士制度を分けて考える必要があると思われる.すなわち医師の場合は各領域の専門性が明確であり,消化器内科および外科の医師と泌尿器科の医師はそれぞれ独立した専門分野の医師であり,認定制度も現制度のごとく別々であるべきと思われる.実際の臨床の場では消化器領域を専門にする医師でも,必要に応じて腎臓や副腎,さらに膀胱や前立腺なども観察することがあるが,これらの臓器を観察するにあたっては認定されていないと検査を施行できない訳ではないので,従来の認定制度による領域を継承して問題ないと思われる.一方,技師の場合,医師と異なり専門性は一般的に明確ではなく,消化器領域のみの検査に携わっている技師や泌尿器科領域のみの検査に携わっている技師は少なく,通常は複数の領域の検査に携わっていると思われる.また検査士試験の受験者数も消化器領域と比べて泌尿器科領域や産婦人科領域では少ない現状から,消化器領域に泌尿器科領域や産婦人科領域を含めて腹部領域として,試験認定を行うことも一案と思われる.ただこの場合の問題点として,なぜ泌尿器科領域や産婦人科領域の受験者が少ないかを考える必要があると思われる.その理由の一つとしては,技師が泌尿器科領域や産婦人科領域の受験を希望しても,これらの領域の検査を行う機会が少ないため規定の症例数に到達することができず受験できないことがあげられる.泌尿器科領域や産婦人科領域を専門とする医師は外来診察の際,診療の一環として超音波検査を自身で行うことが多く,また経直腸的または経腟的な検査に関しては技師が行うことができないため,どうしてもこれらの領域に関しては技師が経験できる症例数には限りがあると思われる. 以上から検査士試験の消化器領域に泌尿器科領域や産婦人科領域を加えて「腹部領域」とすると,症例数の関係から受験資格を得ることが困難になったり,試験範囲が広範になるため,かなり経験を積んでからでないと受験できなくなる可能性もあり,慎重に検討すべきであると思われる.一方,今回新しい認定制度として指導検査士制度が設立されたが,この制度では消化器領域,泌尿器科領域,産婦人科領域をまとめて腹部領域として,試験を行う予定になっている.この制度は今までの検査士制度の上級に位置する制度であり,経験年数も最低13年以上が求められているため,前述のように消化器領域,泌尿器科領域,産婦人科領域をまとめて腹部領域とすることに異論はない.