Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション6 超音波専門医および検査士制度における領域の見直し:消化器領域を腹部領域とすることを議論する

(S155)

現場における技師の検査範囲への取り組みと領域別検査士ライセンス

Approach to ultrasound evaluation of the entire abdominal cavity and licensing of the registered diagnostic medical sonographers in subspecialties

関根 智紀

Tomoki SEKINE

国保旭中央病院中央検査科

Department of Laboratory, Asahi General Hospital

キーワード :

【はじめに】
 超音波検査は臨床の場において必要不可欠の検査法として確立し,検査技師も積極的に検査に携わっている.このようななか日本超音波医学会では領域別に検査士ライセンスが設けられており,毎年多くの検査技師が担当業務のライセンスを受験している.ただ,最近では検査業務が広範囲となり,消化器のライセンス取得者であっても腹部全般の検査を受け持っているのが実情である.今回,日本超音波医学会は指導検査士制度試験を開始するにあたり,消化器領域に一部泌尿器科領域と産婦人科領域の内容を含めて腹部領域にすること,また検査士試験の領域を見直しすること,などを検討している.これら問題について現場の検査業務の状況をみながら「現場における検査技師の検査範囲への取り組みと領域別検査士ライセンス」について述べてみたい.
【消化器検査士による検査業務の状況】
 1.検査業務の調査 消化器の検査士であり,臨床の場で日常検査を進めるかたわら超音波系学会の役員を務める検査技師の35名(35施設)に検査の実情についてアンケート調査をした.2.検査の実情について(詳細内容は発表時に提示)①消化器以外の腹部系のライセンスを取得していますか? 他はなし77%,泌尿器のみ14%,産婦人科のみ0%,泌尿器と産婦人科9%,②日常検査で消化器以外の腹部系臓器も検査していますか? している100%,していない0%,③消化器以外の腹部系臓器で検査しているものは? 腎臓100%,膀胱100%,前立腺100%,卵巣77%,子宮77%,産科17%,④検査後のフィードバックはなされていますか? 腎臓100%,膀胱100%,前立腺97%,卵巣89%,子宮89%,産科100%,⑤泌尿器検査の習得法は? 学んでいない0%,独学40%,先輩29%,専門医から31%⑥婦人科検査の習得法は? 学んでいない0%,独学49%,先輩26%,専門医から26%⑦産科検査の習得法は? 学んでいない63%,独学3%,先輩17%,専門医から17%
【考察】
 消化器の検査士による泌尿器や産婦人科領域のライセンス取得率は思いのほか低い(9~14%)ものであるが,実際の検査の場ではライセンスの有無とは裏腹に泌尿器100%,子宮や卵巣77%で検査が施行されていた(産科は17%と低いが).この理由は,①検査の観察範囲は領域ライセンスで決まるのではなく病態生理の関連範囲で決まること,②腹部全体の観察を一元的に進めることはそれほど負担でないこと,③検査技師の業務範囲が広範囲なこと,と考える.すなわち腹部症状を有する患者がいれば,検査の流れと観察範囲は自然に消化器〜泌尿器〜婦人科となる.このことは,技師の日常検査は消化器ライセンスのみの取得者であっても,今後展開すると思われる泌尿器そして婦人科領域の知識と技術が求められる裏付けになる(産科は病態生理が異なると考える).消化器の検査士における泌尿器や産婦人科への教育と技術習得に目を向けると,専門医から指導を受けていた技師は17~31%とあまりに少なく,多くの技師は独学や先輩技師によるものである.学会を通じた指導〜教育活動が新たに推し進められことも必要と考える.
【まとめ】
 腹部領域の超音波検査は病態生理のつながりで観察が進められていく.技師による超音波検査においても,これまで以上に検査手技の向上と精度の保障を提供するにはライセンス領域の見直し(消化器領域を腹部領域とする)も必要と考える.