Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション6 超音波専門医および検査士制度における領域の見直し:消化器領域を腹部領域とすることを議論する

(S154)

超音波専門医&検査士制度における領域の見直し

A review of ultrasound specialized fields

石田 秀明1, 小松田 智也1, 古川 佳代子1, 渡部 多佳子1, 大山 葉子2, 長沼 裕子3, 村上 和広4

Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Kayoko FURUKAWA1, Takako WATANABE1, Yoko OHYAMA2, Hiroko NAGANUMA3, Kazuhiro MURAKAMI4

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田組合総合病院臨床検査科, 3市立横手病院消化器科, 4エムエスエム

1Department of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4MSM

キーワード :

視点(1)消化器専門医が腹部超音波検査を施行するとき気になる点として,消化器以外の臓器が腹部にありそれをどう扱うか,という問題がある.具体的には,a)腎,後腹膜,膀胱,前立腺,といった泌尿器科領域,b)子宮,卵巣,付属器,などの婦人科領域,であり,さらに,c)腹部大動脈とその分枝や下大静脈,といった血管系,d)脾やリンパ節,といった網内系,も純然たる消化器領域とは言いがたい.そこで純消化器領域のみを専門的に診断する,といった縮小(凝縮)路線があってもいいわけではあるが,その逆に,上記のa)-d)を含む拡大路線があってもいいわけである.どちらの方向に向かうかは善悪ではなくpolicyで決めるしかない.学会としては,“消化器領域”というくくりから“腹部領域”へと,拡大路線の方向を目指したわけである.これは下記の理由から間違った判断とは思われない.視点(2)一応消化器内科の医師として外来を担当している私の個人的な印象として,なんと他科(特に,泌尿器科,婦人科)の疾患で消化器受診患者が多いのか,といつも驚かされる.卵巣捻転や尿管結石などは極めて日常的に遭遇するため消化器内科医師が日常診療する際常に念頭に入れるべき疾患である.これから医療は“機動力”が問われる.初期対応力養成のためにも医師の守備範囲を広くすることには意味がある.視点(3)日常の超音波検査の多くを担当する技士にとって腹部超音波は腹部超音波であって消化器超音波ではない.検査中に見える所見についてはその記載を求められる.ドックであれ外来であれ基本姿勢は同じである.そこで消化器領域を中心とするが,上記のa)-d)まで含んだひろい守備をすることは技士にとって必要最低条件である.確実な守備力を身につけるため,上記の拡大路線は当然である.視点(4)現在超音波検査に対する一般的評価は極めて低い.これが事実である.それは技士の適性や能力以上に,日本超音波医学会自体が超音波教育に対する確固たるビジョンを持たなかったこと,それにひきづられる様に指導する医師が超音波教育に対する情熱を持たず,中身のない“がらんどう指導”を繰り返してきた結果に他ならない.このだらけた指導体制を正すためにはまず指導医がもっと勉強をするべきである.これは上記の拡大路線に対応する姿勢のみならず,超音波そのもの(原理の理解,基本走査の収得,など)に対する姿勢が問われている.上記の視点に関し,具体的事例を交えお話したい.