Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション5 全身の血管病を診る:動脈硬化・血栓

(S151)

大動脈疾患を診る

Evaluation of aortic disease

西上 和宏

Kazuhiro NISHIGAMI

済生会熊本病院集中治療室

Critical Care and Cardiology, Saiseikai Kumamoto Hospital

キーワード :

【背景】
大動脈の動脈硬化性疾患として,真性大動脈瘤と大動脈解離が挙げられる.真性大動脈瘤は,無症状で進行し,破裂で致死的状況に至り,初めて発見される事もまれではない.大動脈解離は,心タンポナーデ等で意識消失や分枝血管の虚血による臓器虚血を主訴として,救急外来で見落とされることがある.日頃の大動脈スクリーニングや緊急時に大動脈をチェックする習慣が重要である.
【心エコー時の大動脈スクリーニング】
心エコーの多くは,動脈硬化性疾患を対象に施行される.従って,大動脈瘤をスクリーニングする重要な機会である1).左室長軸像では,上行大動脈基部が観察されるが,上位肋間(Superior para-sternal view)からは中間部近くまで描出する事ができる.さらに,scaleを下げれ(small scale view)ば,左房の背部に下行大動脈が観察できる.下大静脈を心窩部-腹部(Sub-xyphoid and abdominal view)から観察する際には,腹部大動脈をスクリーニングできる.さらに,仰臥位で枕を外し,胸骨上(Supra-sternal view)からは,大動脈弓部が観察できる.
【大動脈の動脈硬化評価】
1)紡錘状大動脈瘤は最大短径で計測する.大動脈瘤は蛇行していることが多く,CTのように体の横断像では斜めの断面で描出されやすい.短径で評価することで計測が一定となる.2)嚢状大動脈瘤は長軸像で評価する.嚢状瘤は,短軸像では,一般に円形に近く,紡錘状瘤と鑑別が困難である.長軸像で,形態を評価することが重要である.長軸像の最大突出部を計測する.3)Penetrating Atherosclerotic Ulcer (PAU)を診る.PAUとは大動脈壁のプラーク破裂である.カルデラ様形態が観察される.冠動脈のプラーク破裂とは異なり,多くは無症状であるが,内膜が剥離した状態であるため,非典型的大動脈解離として扱われている.いわゆる限局性大動脈解離として描出される.4)可動性プラークの有無をチェックする.プラーク破裂に伴いプラーク内のコレステロールが大動脈内に出て,可動性プラークとして観察され,コレステール塞栓症(Blue toe症候群)の原因となる.カテーテル検査は,コレステロール塞栓症を誘発するため危険である.
【救急外来での大動脈疾患】
1)心膜液や胸水があれば,まず大動脈解離や瘤破裂を疑う.心タンポナーデの多くは,Stanford A型大動脈解離である.一過性の血圧低下により意識消失で発症することも少なくない.2)急性冠症候群でも,冠動脈入口部に内膜flapがないか確かめる.大動脈解離に伴う冠動脈虚血もある.大動脈バルーンポンプは禁忌となる.3)頸部エコーは大動脈解離を発見するきっかけとなる.大動脈解離の合併症として,脳梗塞は少なくない.頸部エコーで総頸動脈に内膜flapがないかを確認する.4)急性腹症では,大動脈解離による腸管虚血および腹部大動脈瘤破裂のチェックを行う.但し,内腸骨動脈瘤はエコーで描出困難な事が多い.5)大動脈解離のスクリーニング.偽腔開存型大動脈解離は内膜flapの検出が中心となる2).偽腔閉塞型大動脈解離は,壁在血栓やプラークとの鑑別に注意する3).
【参考文献】
1)Simultaneous examination of the aorta in echocardiography. J Echo-cardio-graphy 2010, 8(4):150-151
2)Echo findings in aortic dissection and car company symbols. J Echo-cardiography 2009, 7(4): 85
3)Echocardiographic characteristics of aortic intramural hematoma for the differentiation from atheromatous plaques and mural thrombi in the aorta. J Echocardiography 2011, 9(4): 167-168