Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション4 携帯超音波検査による診療体系の変化−診療報酬も含めて−

(S146)

携帯超音波検査の在宅医療における有用性

A hand carried ultrasound device is valuable for home care.

泰川 恵吾

Keigo YASUKAWA

医療法人 鳥伝白川会 ドクターゴン診療所在宅医療

Home care, Dr.GON Crinic

キーワード :

【はじめに】
近年,我が国の急速な高齢化に伴って,在宅医療の需要が急速に高まっている.当医療法人では,平成9年より沖縄県の離島である宮古群島全域を対象とした在宅診療を開始し,平成16年からは神奈川県の超高齢化地域である鎌倉市を中心に,在宅医療に重点を置いた地域医療を行っている.開設当初より,在宅看取りを希望する患者や特に重篤な患者を主な診療対象としてきたため,様々な検査,治療器具を携帯し,自動車,自動二輪車,船舶,ジェットスキー等にそれらを搭載して患者の自宅で診療を行っている.
【背景】
行政が入院期間の短縮などを目的として在宅医療を推奨することで,在宅医療を受ける患者は急増している.疾患も多岐にわたり,診療技術の高度化が求められるようになってきた.しかし,施設内と比べると,在宅診療の現場では聴診ひとつでも周囲の騒音などのために条件が非常に悪く,検体検査は運んでいる間に精度が悪化しやすく,結果を見て治療を開始できるまでに非常に時間がかかることが多い.レントゲン検査や内視鏡検査は極めて困難である.その点,超音波検査は古くから一人で運搬可能な機種が販売されており,現場で多岐に渡る診断が可能な汎用性の高い検査である.しかし,ノートパソコン程度の大きさでは,常に携帯することが困難で,検査の必要があれば,あらかじめ用意する必要があった.最近発売になったGE社の超音波装置Vscanは,ポケットサイズであるにも拘らず,カラードプラーまで備えており,在宅医療の現場に常に携帯して使用することが可能である.
【症例提示等】
高齢者やADLの悪い患者で頻度の高い症状である,自覚症状のはっきりしない熱発の原因精査には,外傷患者に施行するFASTを応用し,チェックポイントを追加してUB-FAST (Urinary system, Biliary tract,-Focused Assessment with Sonography for Trauma)の走査を施行することが有用である.患者のベッドサイドで確定診断ができれば,治療までの不要な労力と時間の無駄を減らすことができる.また,最近急増している胃瘻の管理では,カテーテル交換やトラブルに際して,胃内を充満した状態で左肋骨弓下走査を行うことによってカテーテルの位置や形状を確認することができる.その他にも,災害現場など様々な場面で有効に用いることができる.
【考察-診療報酬も含めて-】
Vscanは,あまりにも簡便な装置であるために,不要な検査が保険請求される可能性は否めない.例えば,セクタのみのプローブは浅い血管や体表の検査には不適であるにも拘らず,請求上濫用される可能性がある.我々は,実際に所見を認めた場合と,処置などに有用であった場合のみに保険請求するようにしている.カラードプラーを備えた超小型の超音波検査装置を常に訪問診療や往診に携帯し,使用に熟練することによって,在宅診療の精度と効率が向上することは言うまでもない.それだけでなく,結果としてそれ以上の不要な検査や治療を避け,重症化と入院を回避することで,むしろ医療費全体の削減に繋げたいと考えている.