Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション4 携帯超音波検査による診療体系の変化−診療報酬も含めて−

(S146)

携帯超音波(V scan): 現状と近未来

Pocket-sized US machine: present and near future

石田 秀明1, 大山 葉子2, 長沼 裕子3, 大野 長行4

Hideaki ISHIDA1, Yoko OHYAMA2, Hiroko NAGANUMA3, Nagayuki OHNO4

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田組合総合病院臨床検査科, 3市立横手病院消化器科, 4GE横河メディカルシステム株式会社超音波担当

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4Ultrasound System Group, GE-Healthcare

キーワード :

【はじめに】
ポケットサイズの携帯超音波診断装置(V scan, Vsc)がGE Health Careから発売されたのが2010年秋で,すでに1年経過した.最近の経験を基に,V scの現在を見直し近未来的利用法を考えて見る.1)活用の場:救急や在宅の現場や外来診療に極めて有用であるが,“第二の聴診器”的に医師が常に携帯しすぐに利用することに徹すれば活用の場はさらに拡大するはずである.そのためには,若手医師に対する超音波教育を徹底する必要があります(2)若手医師の項参照).2)若手医師の意識:初期研修医のみを対象にした講習会を対象に,1)超音波の各種最新技術を実際に体験してもらい興味を示した技術(複数)を述べてもらった.2)Vscに関し,a)すでにVscを使った経験があるか?b)Vscは臨床の場で役に立つと思うか?c)Vscを使いこなす超音波技術を身につけたいか?d)近い将来Vscを使える医師と使えない医師では臨床力(診療の機動力)に差が出ると思うか?e)普段から超音波検査に慣れておかないとVscは使えない,と思うか?という質問をすると,Vscは,a)未体験であったが,b)臨床の場で役に立つと思う,c)使いこなす超音波技術を身につけたい,d)近い将来Vscを使える医師と使えない医師では臨床力(診療の機動力)に差が出ると思う,e) 近い将来Vscを使える医師と使えない医師では臨床力(診療の機動力)に差が出ると思う,という反応が圧倒的であった.このことは,若手に対する超音波教育を全国規模で徹底した場合,医師がみずから超音波を積極的に活用するようになり,(1)医師の超音波離れ防止,(2)日常診療の機動力向上,が期待できる.これは,日本超音波医学会自体の発展にも寄与する活動になるので,学会の責任においてしっかりしたシステム作りをすべきである.なお,上述の各種最新技術は,硬さ診断技術(ARFI, Elastography,など),3D(Bモード,カラードプラ,および周辺のvolume data活用),Navigation system,とでVscある.3)診療報酬(検査料)について:これは種々の現実的因子がからんできて裁量の結論が出せないが,検査料据え置き派,検査料引き下げ派にもそれぞれ根拠はある.検査料据え置き派:それでなくても検査料が低く設定されている超音波検査に関し,さらに料金Vscを低く設定することは,(超音波のことなど一切分からない)おかみが(現状の)検査料全体を負の方向に変更する呼び水になる,というものである.検査料引き下げ派:Vsc一回の料金がハイエンド装置一回と同じとなれば,超音波検査を安直な収入促進道具と考え,ハイエンド装置の開発や普及が妨げられる,というものである.ゆえに,早い時期に,装置のすみわけ,と装置に合った検査料設定が,超音波検査全体の健全な運営からも望ましい,というものである.要は,理想と現実の間でどうSoft landingするかであり,まず学会で結論を出すべきである.